/Dev チームファイト タクティクス:レコニングから学んだ教訓
TFTのリリースからもう2年経ったなんて…信じられますか?「レコニング」も終幕が近づき、恒例の「教訓」シリーズの時期がやってきました。前回の約束はどれくらい達成できたのか?そして「ギズモ&ガジェット」で何を改善していくのか?今回もぜひお付き合いください。
要約
ランク戦の追い込みが忙しすぎる方は、以下の要点まとめをどうぞ。
振り返り
- セット固有要素:「宿命」セットの固有要素はプレイスタイルの多様化に大きく貢献した反面、プレイヤーの影響力は下がりました。しかし、「レコニング」のセット固有要素では結果が正反対になってしまいました。今後のセット固有要素ではプレイスタイルの多様性を保ちながらプレイヤーの総合的な影響力を高め、プレイヤーが腕前を示せる状況を作るべく努力していきます。「ギズモ&ガジェット」のセット固有要素はこの目標を特に意識しています。
- ミッドセット拡張:ミッドセット拡張は、継続的にプレイしている方に意味ある変化をもたらすものでなくてはなりません。「レコニング」のミッドセット拡張でも新チャンピオンを通じてこれを達成しようとしましたが、初期のイテレーション(試行錯誤)中に問題が顕在化した上、シャドウアイテムの代わりを務めるレディアントアイテムの開発が必要になったこともあり、結果的に方向転換を余儀なくされています。
- チャンピオンの強さとコストの関係:「宿命」セットのバランス調整では、コストに応じたチャンピオンの強さをする点で大変苦労しましたが、この問題は「レコニング」前半にも持ち越されました。問題の多くを「希望の光」で修正できたのは幸いでしたが、今後は場当たり的に修正するのではなく、セットのリリース時点から「コストに合った強さ・印象」を実現できるよう改善していく必要があります。
- フォーチュンとエコノミーボーナス特性:非常に楽しい特性だったフォーチュンと比較して、ドラコニックのワクワク感はフォーチュンの水準に届きませんでした。このため今後のエコノミーボーナス特性では、上手くプレイした場合にしっかりと興奮を作り出せるよう徹底していきます。次回の「ギズモ&ガジェット」でもダイス/お宝/逆転要素を豊富に用意するのでお楽しみに。
今後の取り組み
- セット固有要素の複雑さ:セット固有要素はワクワク感を一層強化し、核となるゲーム体験を盛り上げるものにすること、プレイヤーを圧倒するほど複雑すぎず、既存のゲームルールの楽しさを損なわないものにすることなど、「レコニング」セット固有要素からは実に多くの教訓を得られました。しかしだからといって、今後のセット固有要素をシンプルで小規模なものにするわけではないのでご安心ください。「ヘクステック オーグメント(仮称)」も全然小規模ではありません。もちろんシャドウアイテムのように、核となるゲーム体験を一層複雑にするようなこともありません。
- 有力構成への極端なナーフ:これはSティア構成を、まったく実用的でないFティアにまで一気にナーフ(弱体化)することを指します。「レコニング」前半で特に頻発させてしまいましたが、チームではこのようなことを繰り返してはならないと認識しており、予防策として今後はバランス調整の度合いをもっと軽くしていきます。良好なバランス状態に達するまでの時間が長くかかるようになりますが、今回のような事態を避けるためには必要な犠牲だとご了承ください。
- ユニークな特性:「レコニング」は唯一無二の魅力を備えた特性に欠けるセットとなってしまいました。具体的には、シェイプシフターやメイジのように試合を盛り上げるものが存在しなかったのです。今後はよりユニークでゲーム体験を一新するような、これまでのTFTでは見たことがない特性をお届けしていくつもりですので、ぜひご期待ください。
- ティア5チャンピオンのワクワク感:「レコニング」のティア5チャンピオンは(ダメージ以外の点が強力な)ユーティリティ系のものが多く、盛り上がりに欠けました。今後のティア5チャンピオンでは、独自のユーティリティを備えたチャンピオンは3体とし、他の5体は「宿命」ミッドセット「獣たちの宴」のようなハイパーキャリーにしていきます。振り返ってみれば、ミッドセットであった「獣たちの宴」のティア5チャンピオンたちは「宿命」セットに新たな息吹と興奮をもたらすものでした。今後は同様のフレームワークを用いてティア5チャンピオンを設計していきます。
- ランク戦システム: ランク戦のシステムには未だ不満点が存在していますが、これに対するシンプルな解決策は存在しません。とはいえ新セット「ギズモ&ガジェット」でもシステムの改善は続けていきます。今後は新ランク(ブロンズ/シルバー/ゴールド/プラチナ/ダイヤモンド/マスター)到達後、そのセット半分の期間は降格しなくなります。
- ハイパーロール:批判的な評価もありましたが、ハイパーロールは熱心なファンも獲得することができました。このため(少なくとも)次のセットまでは続投とし、引き続き本モードを改善していきます。
振り返り
まずは前回の教訓記事を振り返り、評価してみましょう。
セット固有要素
セット固有要素では「宿命」と「ギャラクシー」の教訓を活かし、「プレイヤーが制御できない」感覚を抑えてプレイヤーの影響力を高めることを目指し、アーマリー、シャドウアイテム、そしてレディアントアイテムを導入しました。TFTは判断を積み重ねていくゲームであり、適切なタイミングで適切な選択をすることは腕前を示す大きな指標です。この点を踏まえると、各システムはプレイヤーの影響力を大きく高めてくれたと考えます(アーマリーならば、最終的な目標を踏まえて素材アイテムを選択する手段)。とはいえ、これらの要素もトレードオフがなかったわけではありません。たとえばアーマリーの導入によりPvEラウンドで入手できるアイテムが減少したため、PvEラウンドの満足感は低下しました。またシャドウアイテム(後ほど詳しく取り上げます)は完全に無視してプレイすることも可能でした。セット固有要素の中心的存在を無視しうる状況というのは、当然ながら良い兆候ではありません。そしてプレイヤーの影響力を高めたことで、「選ばれし者」などと比較して試合展開の多様さが損なわれた点も反省が必要です。総合的には利点のほうが多かったと考えていますが、「ギズモ&ガジェット」のヘクステック オーグメント(仮称)ではプレイヤーが腕前を発揮するために必要な影響力を維持しつつ、試合展開の多様さが犠牲にならないセット固有要素を目指します。
ミッドセット拡張
過去最大規模だった「宿命」のミッドセット拡張では、実に多くの教訓が得られました。これを踏まえ、「レコニング」のミッドセット拡張ではセット固有要素を変更し、主要なキャリーチャンピオンを入れ替え、おなじみの人気チャンピオンに加えて新チャンピオンも追加するとお話ししたのですが…この目標は十分に達成できませんでした。とはいえ、今回の拡張でもたくさんの教訓を得られたと感じています。まず今回は「宿命」よりも再登場チャンピオンを減らし、新チャンピオンを増やすことを目指したのですが、新登場予定だったチャンピオンの一部は開発が難航してリリース取りやめになった(光の番人のティア4キャリーを想定していたグレイブスなど)ため、最終的にはルシアンなど再登場チャンピオンで代替することになりました。また、シャドウアイテムを含め「レコニング」セット前半はプレイヤーの皆さんにも私たち開発チームにも難題を突きつけるものとなってしまいました(こちらについては後述します)。これは結果的に、「TFTをやめてしまった方が再開できる」方向へセット固有要素を刷新する決断につながっています。レディアントアイテムのような要素は以前から検討していたのですが、今回はシャドウアイテムの代わりになる大規模なシステムを極めて短期間で完成させねばならない状態となってしまいました。一方で幸いなことに、神々の祝福と特性の書は多くのプレイヤーに愛される要因となりました。今回の経験から開発チームが得た教訓は「ミッドセット拡張は継続的にプレイしてくれる方が一層楽しむためのものでなくてはならない」というものです。このため今後のミッドセット拡張では、既存プレイヤーの満足度向上、セットを一層楽しめる「意味ある変化」の提供を目指していきます。
チャンピオンの強さとコストの関係
「宿命」セットのバランス調整ではコストに応じたチャンピオンの強さを実現するのに大変苦慮したため、「レコニング」ではバランスフレームワークを改善し、多様なプレイスタイルを奨励することを目指しました。しかしこの点についても、セット前半でさまざまな難題に直面しています。まずチームはバランスフレームワークを構築したのですが、その後まもなく2つのことを学びました。TFTのバランス状態はごくわずかな調整で変化してしまうこと、そしてLoLのフレームワークはメタの現状を示してくれるものであってメタの可能性を示すものではないということです。この2つが最も顕著だったのがパッチ11.9~11.10のタイミングでしょう。当時、ヴェインはフレームワークの全指標において不遇状態にあり、大幅なバフが必要であることは明白でした。しかしパッチ11.10の完成と同じ頃、シャドウジークで攻撃速度を強化するビルドが発見され、ヴェインの評価は即座にF-ティアからS+ティアへと上昇。開発チームは即座に大幅ナーフを余儀なくされました。
また同時期には、一部のチャンピオンについてコストに応じた健全な強さを見定められず苦労していました。たとえばルブラン。「レコニング」前半の彼女は多くのプレイヤーにとって悪夢以外の何物でもないチャンピオンでした。ティア2チャンピオンがCC豊富な高火力の最強アサシン、というのは理屈が通りません。またトランドルとライズにも同様の課題があり、カウンター手段が少なく、強さの視認性が低く、運まかせの要素が強く、対戦していて楽しくないチャンピオンの筆頭となっていました。また強力でワクワクする存在であるはずのティア5チャンピオンの中には、極めて限定的な状況でしか活躍できないチャンピオンも存在していました。たとえば、ケイルが活躍するにはナイト構成がほぼ必須でしたし、ダリウスは特定のアイテムと構成を揃えてようやく及第点といったところ。セット前半のティーモも支払う体力に見合うほどの強さはありませんでした。問題の多くを「希望の光」で修正できたのは幸いでしたが、今後は場当たり的に修正するのではなく、セットのリリース時点から「コストに合った強さ・印象」を実現できるよう改善していく必要があります。
フォーチュンとエコノミーボーナス特性
フォーチュンのワクワク感は、パイレーツ/宇宙海賊と比較しても頭ひとつ抜けた存在でした。このため「レコニング」でも同種のエコノミーボーナス特性を目指し、タマゴからチャンピオンを入手できるドラコニックを導入したのですが、フォーチュンと比較してみると「ワクワク感」の面で大幅な後退だったと評価せざるを得ません。特にセット前半はレベル7でハイマーディンガーを引けなければドラコニック(5)を発動できなかったため、一層見劣りしました。またドラコニックではチャンピオンを一気に大量獲得したり★3にしたりする要因が少なく、アッシュやセトを繰り返し売却することになりがちで、従来のエコノミーボーナス特性のようなプレイ感覚も不足していました。とはいえステージ2-1でドラコニック(3)を発動できればそのまま試合に勝つことも可能でしたから、ドラコニックが弱かったわけではありません。この種の特性に期待される効果ではなかったというだけです。求められていたのは「リスクを取り、正しい判断を重ね、大きな成果を得る」という盛り上がりだった、とも言い換えられるでしょう。4~5ターンで孵化する金タマゴはこの点をクリアしていますが、いかんせん出現タイミングが遅すぎます。このため今後のエコノミーボーナス特性では、上手くプレイした場合にしっかりと興奮を作り出せるよう徹底していきます。次回の「ギズモ&ガジェット」でもダイス/お宝/逆転要素を豊富に用意するのでお楽しみに。
今後の取り組み
続いては「レコニング」で得られた教訓(たくさんあります!)をどのように活かしていくかについてお話ししてみます。
セット固有要素の複雑さ
セット固有要素は多くのプレイヤーにとってセットで一番大きな印象を残すものです。そこで「ギズモ&ガジェット」では、複雑だった「レコニング」のセット固有要素から学んだ多数の教訓を反映することを意識しました。そもそもTFTはゴールド管理、盤面の強さ、チーム構築、ユニット配置、アイテム選択、試合のペース管理、リスク管理などの側面を持ち、基本からして複雑なゲームです。TFTのファンや戦略ゲーマーにとってはそういった部分が楽しさの源であり、そこに問題はありません。しかし、その上に複雑な要因を重ねるのはかなり危険な行為です。それが一番難解な要素を一層複雑にするものであればなおさらに。元々TFT屈指の難易度を誇る要因だった装備アイテムの選択に、セット固有要素としてシャドウアイテムを追加したことで、複雑さは一層深まってしまいました。そのような難しい判断を楽しいと感じてくれた方もいましたが、多くの人にとって満足感の高いものではなかったと言えます。これは多くの人が一番楽しんでいるポイントが「自分だけのチームを構築し、戦術的に勝つ」点にあるためです。しかしシャドウアイテムは、アイテムの入手という「盛り上がりポイント」を「解決すべき問題」に変化させてしまっていました。誤った選択をすれば自慢のチャンピオンが自らにダメージを加えたり、スキルの有効性を下げたりし、結果的に試合に負けてしまうからです。「こんな種類の楽しさは望んでいない」という皆さんの声は明瞭・明確に私たちの耳にも届いていたため、私たちはその後(扱いやすく、マイナス効果がない)レディアントアイテムに切り替えました。また、これ以外に追加した神々の祝福や特性の書もかつてない盛り上がりの瞬間を生み出してくれました。振り返って評価してみれば、「希望の光」のほうが楽しく、遊びやすい方向性だったことは明白です。そこで今後のセット固有要素はワクワク感を一層強化し、核となるゲーム体験を盛り上げるものにすること、そしてプレイヤーを圧倒するほど複雑すぎず、既存のゲームルールの楽しさを損なわないものにすることを確実に目指していきます。開発チームは「レコニング」で、セット固有要素をワクワク感と楽しさに満ちたものにすることの重要性を心の底から学びました。これは今後の開発にぜひ生かしていきます。もちろん今後のセット固有要素はシンプルで小規模なものにするわけではないのでご安心ください。「ヘクステック オーグメント(仮称)」もかなり大規模でチャンス満載のものになっています。そして…シャドウアイテムのように、核となるゲーム体験を一層複雑にするようなこともありません。
有力構成への極端なナーフ
これは非常に重要なトピックですね…。これまでTFTでは迅速・ピンポイントな対応を通じて健全なバランスと実用的なチーム構成の多様性確保を目指してきました。このためセットリリース直後のゲームバランスはかなり「荒く」なることが結果的に多くなっていました。プレイヤーの手でが発見された強力「すぎる」構成やアイテムビルドを、開発チームが認識し次第バランス調整を実施する、という流れです。この流れの結果、セット後半に差し掛かる頃にはゲームバランスは一定水準に達するようになっていました。時にはチャンピオン/特性のリワークでバランス調整がゼロからやり直しになることもありましたが、これはバランス調整の流れの一環と言えるでしょう。今後のセットで何としても防ぐべきは、セット前半に生じていた「有力構成への極端なナーフ」です。非常に強力な構成(パッチ11.10のスカーミッシャー6体構成など)が発見されると、多くのプレイヤーが運用方法(アイテムを装備させるチャンピオン、位置取り、苦手とする相手など)を学び、習熟していきます。その結果、不可避の結末として、当該構成がナーフを受ける。構成にナーフが必要であれば、それは当然のことです。しかし開発チームがSティア構成を一瞬でFティア構成に転落させるような大幅ナーフを加えるのは問題です。運用方法を学んだ構成が大幅ナーフを受けて使い物にならなくなれば、習熟に費やした時間が無駄になってしまいます。皆さんにも、お気に入りの構成がある日使い物にならなくなった経験があるのではないでしょうか。つまり私たちは、プレイヤーの皆さんに痛みを強いてきたということになります。これは改善せねばなりません。そこで「希望の光」ミッドセットではこれを予防するバランス調整アプローチを採用し、おおむね成功を収めました。成功例では、ナーフやバフを調整を2~3パッチに分けることで最適な数値を特定できましたが、一部のケースでは失敗もしており(パッチ11.16bのトリスターナに対するナーフが過剰で構成に影響した点など)、この点についてはまだまだ改善の余地があります。とはいえ、時間をかけてバランス調整を実施していくアプローチはこれまでよりもスムーズであることは間違いないため、今後も有力構成への極端なナーフを予防するため、バランス調整を軽めに施していきます。結果的に目標とするバランスに到達するまでに時間がかかるようになるかとは思いますが、ご了承いただければ幸いです。なお「ギズモ&ガジェット」のバランス調整フレームワークは、おおむね「希望の光」と同じですが、大型変更については一層軽めに進めていく予定です。
ユニークな特性
セット開発の重要目標のひとつに、バラエティーに富んだ特性を幅広く揃えるというものがあります。これを達成できると、幅広いプレイスタイルや対戦環境を生み出し、ゲームとしての魅力や試行錯誤の楽しさを高めることができます。もちろんステータス上昇系の分かりやすい特性(ヴァンガード、ブローラー、レンジャーなど)はどのセットにも存在し、複雑な特性を支える役割を果たしますが、セットには好奇心をくすぐられるユニークな特性も欠かせません。この「ユニークさ」という点において、「レコニング」は充分に応えられなかったように感じています。多くの特性はユニークな方法で「ステータスを上昇」させるものになっており、真にユニークではなかったとも言い換えられるでしょう。たとえばセットを代表する二大特性ドーンブリンガー/ナイトブリンガーは体力とダメージを付与するものでしたが、これはスカーミッシャーや救われし者と変わりません。要約すれば、大規模特性のほとんどがステータス上昇系だったのです。それ以外のユニーク特性(写し身を出現させる悪鬼、高速突撃するキャバリエ)であっても、主に価値を見いだされていたのはステータス上昇ボーナスのほうでした(それぞれ攻撃速度、ダメージ軽減)。また魔女には新しい配置要素がありましたが、これも最終的には「どのチャンピオンにダメージを出させるか?」という単純な問いになってしまいました。いずれの特性もプレイヤー体験を変化させるものではなかったのです。この教訓を活かし、今後はよりユニークでゲーム体験を一新するような、これまでのTFTでは見たことがない特性をお届けしていくつもりです。
ティア5チャンピオンのワクワク感
試合展開を変革させるほどクールなプレイを生み出すティア5チャンピオンは、セット最大の盛り上げ要員です。無限に分身を生み出すゼド、敵チームをまるごと吹き飛ばしてアイテムを4つドロップさせるガングプランク、後衛に飛び込み敵キャリーを一瞬で倒すケインなどなど…。どのプレイヤーにもお気に入りのティア5チャンピオンがいて、それこそが重要なポイントです。しかし「レコニング」セットの前半にはお気に入りとなりうるティア5チャンピオンがいませんでした。ダリウス、ガレン、ボリベア、ヴィエゴ、キンドレッドはいずれも大暴れするキャリーではなくユーティリティー(補助系)チャンピオンだったためです。またケイルはキャリーだったとはいえ、活躍できるチーム構成が1つしかなく、しかも20秒待つ必要がありました。このため、真のキャリーと呼べるチャンピオンはティーモとハイマーディンガーだけだったということになります。「希望の光」でアクシャンが加わっても、ティア5キャリー不足は解消されませんでした。チームはこの教訓に基づいて「レコニング」と過去セットのティア5チャンピオンを比較し、ひとつの結論を導き出しました。1セットにティア5チャンピオンが8体存在する場合、終盤戦を勝利に導いてくれる「本物のキャリー」は5体必要で、それ以外は独自性のあるユーティリティー系にすべきである、というものです。「獣たちの宴」はその好例で、個性豊かなキャリー系チャンピオン5体(スウェイン、サミーラ、セト、ヨネ、リー・シン)とユーティリティー系チャンピオン3体(アーチファクトを持つオーン、蘇生能力のあるジリアン、兵士を率いるアジール)という内訳になっていました。これを踏まえ、今後のセットでは先述のティア5設計フレームワークを採用し、セットの顔となれる終盤戦キャリーを用意していきます。
ランク戦システム
当初、TFTは基本的にLoLと同じランク戦システムを採用していました。採用理由は、それまでLoLで充分な実績があったこと、そしてTFTの開発期間が極めて短かったことの2点でした。しかし時が経つにつれ、LoLとTFTではニーズがやや異なることが明らかになってきます。苦労して目標ランクに達したプレイヤーが、その後降格を恐れてランク戦をプレイしなくなってしまうケースが多かったのです。これはよいゲーム体験とは呼べません。そこで私たちは、ハイパーロールのランクシステムで「ランク昇格後は絶対に降格しない」という仕様を試し、良好な結果を得ることができました。このため、同様の仕様をTFTのランク戦にも導入することとしました。新セット「ギズモ&ガジェット」では新ランク(ブロンズ/シルバー/ゴールド/プラチナ/ダイヤモンド/マスター)到達後、その半セット中は降格しなくなります。なお、セット/ミッドセット終了時のランクリセットはこれまで通り実施します。また、この変更によりランクの「インフレ」が生じるため、ランク昇格の難易度は若干上昇させる予定です。ランク戦システムにはこれ以外にも改善策を導入していきます。この領域にはまだまだ解決すべき問題があると認識していますから。1位になっても40 LPしか獲得できないのに8位になると80 LPを失う、対戦相手が1~2ディビジョン上の相手ばかりだった、あるいはようやくマスターに到達したけれどグランドマスター到達にはさらに500 LPが必要だった…などフラストレーションはそこかしこにあります。ただし問題が明確でも、その解決策まで明確であるとは限りません。このため各問題には時間をかけて取り組み、解決を目指していきます。ランク戦の問題を一気に解決してくれるような策は存在しませんが、今後も私たちはセットごとにランク戦のコアシステム改善を進めていきます。到達ランクは多くの人にとっての目標であるので、できる限りやりがいのあるものにしていくつもりです!
ハイパーロール
最後のトピックはTFT初のラボモード「ハイパーロール」についてです。まず、第一目標「短時間で遊べるモードを作る」は達成できたのではないかと思います。「ハイパーロール」は平均試合時間20分に、核となるゲームプレイ(チャンピオン獲得、チーム構築、戦闘)を凝縮したモードとなりました。しかし第二目標「覚えやすい・遊びやすいモードを作る」は達成できなかったと考えています。ある程度試合が進行すると、非常に忙しいモードとなってしまったのです。試合時間が元々短いため一息つけるタイミングがなく、プレイヤーはラウンドごとにゴールド消費・アイテム装備・チーム構成変更を繰り返さなければなりません。最初の数ラウンドですら、序盤のチームを組んだり、★3ティア1を目指したりと大変忙しない展開が続きます。また、ラボを心から楽しみながらハイパーティアを目指してプレイする方にとって、不正な行動でランキング首位を目指す(その過程でアカウントをバンされる)プレイヤーと対戦しなくてはならない状況は大いにやる気を削がれてしまったことも重々承知しています。しかしそのような状況でも、ハイパーロールは熱心なファンも獲得することができました。このため(少なくとも)次のセットまでは続投とし、引き続き批判された点の改善を進めていきます。ハイパーロールプレイヤーの皆さん、ご意見を心からお待ちしています!
今回の記事はここまでです。いつもTFTをプレイし、フィードバックを寄せてくださりありがとうございます。皆さんが何を楽しんでくれているのかを知ることは、より良いTFT作りにとって何よりの糧となっています。チーム一同、全力で取り組んできた「TFT:ギズモ&ガジェット」をリリースできる日を心から楽しみにしています。それではまた次回!