/Dev TFT:サイバーシティから学んだ教訓

Riot MortとRiot Xtna、その他数名のチームメイトが「サイバーシティ」(やその他のこと)を振り返ります。

「サイバーシティ」のダウンロード完了。教訓のアップロード初期化完了。
TFTの新鮮味と面白さを維持することはとても重要なので、私たちは新たなセットメカニクスや革新的なコスト5ユニット、アイテムのオーバーホールなど、常に新しい要素を試しています。しかし、新しいことに挑戦すれば、成功もあれば失敗もあり、その間の結果もさまざまです。今回はその詳細についてお話しします。

またTFTもかなり規模が大きくなってきたので、本作の様々な部分については開発チームの他のメンバーからそれぞれ話してもらいます。 

それでは、最初に要約をお伝えしてから詳細を話していきます!

要約:「サイバーシティ」から学んだ教訓、特に以下のトピックについて詳しく話していきます。

  • ハック:セットメカニクスの「ハック」は成功で、意義のある戦略的選択肢とシステムの探究が導入されましたが、影響力の大きさはハックごとにかなり異なっていました。もっと時間があれば、戦略性や自由度、楽しさを増やしてくれるようなハックにより注力できたでしょう。

  • 戦利品の配分:ハックは戦利品の総量を大きく引き上げたため、戦利品と基本的なゴールド量のインフレチェックに時間がかかりましたが、おかげで将来のセットに向けてより良い状態を築けたと感じています! 

  • 復刻ユニット:最近のセットで登場したユニットをたくさん再登場させるとセットの新鮮味が低下します。これは新規プレイヤーを参加しやすくするための施策でしたが、新鮮味をキープすることのほうが遥かに重要であることを学びました。

  • プリズム特性:「K.O. コロシアム」では、プリズムティア発動の仕組みを大幅にリワークします。上手くいけば、将来のセットでプリズム特性が担う役割も変化するでしょう。

  • パッチ14.5のアイテムのオーバーホール:パッチ14.5のアイテムのアップデートは今後のゲームシステムの礎を築くものでした。ゲームプレイ面としては良い状態でリリースできたと思いますが、特に「グインソー レイジブレード」といった人気アイテムへの変更に関しては、グローバルな周知施策は万全とは言えませんでした。

  • 「サイバーシティ」のコスト5ユニット:「サイバーシティ」ではこれまでで最もクリエイティブかつゲームデザイン的な満足度の高いコスト5チャンピオンをリリースできました。影響力不足だったユニットもいくつかは存在しましたが、この成功は将来に向けて重要な教訓をもたらしてくれました。

  • リバイバル:リミックス ランブル:「リミックス ランブル」はふだんのゲームシステムと新鮮なメカニクスを組み合わせつつ、力強いエネルギー抜群のテーマを効かせたリバイバルとなりました。ノスタルジックでかつ新鮮に感じられるこのリバイバルは様々な記録を更新しつつも、プレイヤーが実験的な試みをする余地を十分に提供しました。 


ハック

ハックは様々な既存ゲームシステム要素の新たな側面を探る優れた手段となり、特にうまく機能してものは戦略的な判断を促す要素にもなっていました。この点では概ね成功と言えましたが、ハックの真価は、どのハックを選ぶかにかかっていました。「1v2オーグメント」のハック(以下のDev Dropの画像で、ゲームデザイナーMatt Dunnが紹介)や「分けるべきか、分けざるべきか」、(リワークされた)ゴーレム選択などは、どれも素晴らしいハックでした。期待外れだったハックとしては、オーグメントをゴールドで購入できるものや、特別な工夫や戦略的な判断を必要とせずに、ただ戦利品やゴールドを増やすだけのハックが挙げられます。これらはゲーム内経済のインフレを招くだけでした。普段は存在しない「AかBか?」の選択肢を生み出す工夫は、長期的に見ればTFTにとってプラスになります。

セットメカニクスという観点から見て、ハックは非常に有意義なものとなりました。既存のシステムを掘り下げ、意思決定の要素を加えることができたからです。また、ハックはテーマとの合致度も高く、この点もシナジーがあったと言えるでしょう。しかし何より、多くのプレイヤーにも喜んでもらえたことが何よりの喜びです。「サイバーシティ」にはプレイヤーがフラストレーションを感じる部分もありましたが、ハックはプレイヤーアンケートで継続的に高評価が得られており、「アンチャーテッド レルム」の「宝物龍」(これもハックで登場しましたね)と同じくらいの高評価となっていました。とはいえ、このメカニクスには、もう少し洗練させたかったと思う部分も存在します。もし無限に時間があったなら、好評だったハックをさらに強化しつつ、「ブラックマーケット」オーグメントや「特性の書」、前述した「宝物龍」など、過去のメカニクスを再訪する楽しいハックも、もっと掘り下げていけたと思います。

戦利品の配分:出しすぎから絞りすぎへ

「サイバーシティ」では戦利品の配分パターンについて大胆な実験を行い、さまざまな最大値/最小値を試しました。ローンチ時の「サイバーシティ」ハックは提供リソースが多すぎて、試合は戦利品に偏った展開となり、結果的にこの問題を解決するまで2パッチ分の期間が必要でした。

そして「出しすぎ」問題が収束に向かうと、今度は真逆の問題が浮上し始めました。追加の戦利品を「提供しない」一部の開幕時遭遇(「黄金の祭典」など)では、試合展開でリソース不足となり、一部のチーム構成が機能しなくなりました。ヴァンガードマークスマンをプレイする場合で考えてみましょう──序盤に数体のユニットを獲得して、特性に関連したオーグメントを1個手に入れたので、あなたはこの構成にオールインしようと考えます。すると出現したクルーグが何もドロップせず...チーム構成は突如として崩壊します──プレイミスではなく、アイテムが出なかったという理由で。アイテムが重要な構成を狙いに行くリスクは報われませんでした。でもそれはあなたの責任ではありません。アイテムの出現に関することは予測できないからです。

アイテムの配分システムは試合の幅を生み出すものですが、ある試合で何個のアイテムがドロップするのかを知る方法が無い以上、そのパターンを当て込んでプランを立てることはできません。一方でオーグメント、開幕時遭遇、セットメカニクスと、TFTの試合幅を広げる要素は充実し続けており、試合はすでに十分に予測不能でした。そこでパッチ14.6では、戦利品ドロップの振れ幅を縮小し、アイテムとオーブの最小ドロップ数を増加させることを決めました。これによって(特に「サイバーシティ」のハックと組み合わせた場合)「スカトルパドル」や「カニレイヴ」などの遭遇は戦利品が特に多く感じられるようになり、TFTの将来の平均的な戦利品配分を改善することが可能になりました(「K.O. コロシアム」以降にご期待ください)。長期的には、アイテム配分の振れ幅を絞ることで競技的なプレイの安定性が増すだけでなく、率直に言って、プレイヤーがもっと試合への影響力を持った上で試合展開の楽しさや面白さを維持していけるようになるでしょう。

復刻ユニット

「サイバーシティ」において、プレイヤーにとって最も大きな不満の原因となったのは、ユニットや特性の復刻があまりに多かったことでした。これまでは基本的には、コスト4のユニットを少し下方調整してコスト3に変更することは好意的に受け止められていました。しかし、「サイバーシティ」ではそれをせず、代わりに過去セット「Arcaneの世界へ」のチャンピオンを低コスト復刻ユニットとして登場させました。モルガナとザイラは、直前バージョンからわずかに変更されたコスト1の復刻版でした。 

また、特性でも同じようなことを行いました。「ストリートデーモン」は実質的には少しひねりを加えた「K/DA」であり、「ディヴィニコープ」も「ギルド」ととても似ていました。それだけでなく、ブルーザーやヴァンガード、マークスマンなどの多くのクラス特性は過去のセットで登場してからすぐに再登場していました。もちろん今後も、分かりやすいタンクやキャリーのアーキタイプを示す一部のクラス特性は定期的に登場します。しかし今回は再登場ユニット/特性/クラスの相乗効果によりセットの新鮮味が低下していました。

そもそも、私たちがこのリスクを取った理由はなんだったのでしょうか?ちょっと舞台裏を話しすぎかもしれませんが、この決定は論理と戦略に基づく判断でした。「Arcaneの世界へ」で私たちは、この愉快で奥深い戦略ゲームに普段以上の新規プレイヤーを引き付けられると考えていました。このため「サイバーシティ」では、「Arcaneの世界へ」で登場したユニット/特性を部分的に継続することで、そうした新規プレイヤーが次のセットに移行するハードルを下げるという狙いを込めていたのです。しかしその施策は狙った結果にはつながりませんでした。仮に当時いくつかの要素を変えていたとしても、それで果たして上手くいったのか、今となっては断言できません。あるいは新しいセットとは、完全に新しい特性とユニットだけで構成するのがベストなのかもしれません。ただし、新たなセットで楽しさや変化を感じてもらうためには、新奇性や変化が重要であることは間違いないでしょう。今後も私たちは将来のセットで復刻要素を利用していきますが、もっと選択的に行い、頻度は低下させていきます。

プリズム特性

ここしばらくの間、プリズムには同じアプローチを取っていました。特定の特性を+2~3できたら──意図的に高難易度に設定した目標を達成できたら──圧倒的なパワースパイクを迎える、というものです。このプリズムがもたらす盛り上がりはゲームにとっては良いものですが、ステージ2-1で誰かが運よく紋章と「トレーナーゴーレム」(または同様のコンボ)を手にするかもしれないという感覚は、ロビーの士気を高めるという点では良いものではありませんでした。 

そこで「K.O. コロシアム」では別の方法を試していきます。プリズムが発動する方法が変化し、複数の紋章を集めることだけを焦点にしたアプローチからは距離を取ります。これについては後ほどお話ししますが、ここでは常に当てはまる方針について触れておきます。その他すべての実験的な試みと同様に、この新たなアプローチが上手くいかなければ元に戻します。逆に皆さんに気に入ってもらえて、想定した目標を達成できたなら、将来再び登場するかもしれません! 

パッチ14.5のアイテムオーバーホール

パッチ14.5では、いくつかのアイテムをオーバーホールしました。ここでは、これを行った理由に関する長期的な考え方とその結果について触れますが、各アイテムに変更を行った理由の詳細について知りたい場合はこちらのブログをご覧ください。

ゲームの、特にライブサービスゲームの開発では、自分たちの方向性を把握し、変更実装のタイミングを適切に判断することもゲーム開発の一部となります。「K.O. コロシアム」ではアイテムなどに影響を与える大きな変更を行うため、いくつかのアイテムを早めにアップデートすることを決めました。あまりネタバレしないように言うと、(前回の教訓記事で少し触れていた)新たなシステムアップデートでは、ほとんどのアイテムのリワークが必要になります。 

編注:次のセットですべてのアイテムが変更される訳ではなく、核となる機能は変更されません。代わりに、各アイテムが持つテーマをより良く表現できるようにしたり、新システム内で意義を持てるように小規模な調整が行われます。

すべてのアイテムの変更をまとめて行えるまで待つのではなく、パッチ14.5の初期から段階的に実装していきました。この狙いは、アイテムの使い方を劇的には変化させないことで、これらの変更に関するパッチノートや記事を読まなかったり、ローンチ時にリリースされる動画を見なかったとしても、問題なくプレイできるようにすることです。 

では、上手くいったのでしょうか?主要なアイテムに関しては、「ステラックの篭手」だけが想定以上に強くなり過ぎましたが、これ以外はバランスが取れた状態で落ち着きました。アーティファクトは全体的に少し弱い状態でのリリースとなりましたが、「フリッカーブレード」だけは例外で少し強すぎました。 

このアップデートはゲームプレイに関しては上手くいきましたが、周知施策(伝え方、コミュニケーション)は万全とは言えませんでした。多くのプレイヤー(およびバランス/デザインチーム)は新たな「グインソー レイジブレード」に満足しています。より幅広いチャンピオンにとって汎用性が高まり、長年バランス調整の頭痛の種であった乗算的なスケーリングを回避することにも成功しました。しかし、たとえ変更内容に問題がなくても、十分な事前連絡なしに人気アイテムに調整を行うのは望ましいやり方ではありません。

ファン人気の高い要素への変更はいつも難しいものですが、今回の場合は特に一部の地域でメッセージのローカライズが間に合わず、変更の「理由」がお伝えできない問題が起きてしまいました。これは私たちのミスでした。このような状況に対処するための対策をすでに行っており、今後はチーム全体で連携して早めに作業を行うことで、大規模な変更を行う「理由」がプレイヤーに伝わるようにしていきます。

「サイバーシティ」のコスト5ユニット:脅威+新メカニクス

「サイバーシティ」のコスト5ユニットには、まさに圧巻の出来栄えのものがいくつかありました。開発チームは文句なしの仕事をしたと言えるでしょう。ポストモーテム(事後分析)とは大抵の場合上手くいかなかったことの振り返りですが、今回は上手くいった要素を振り返っていきます。なぜなら、成功からも学ぶことはあるからです。

コスト5ユニットに関しては、過去の成功例と新たなアイデアを組み合わせて、それぞれの個性が際立つようにしました。

「Arcaneの世界へ」のアノマリー「力への飢え」の核となる要素をレネクトンが担って一体のチャンピオンとなり、そこに満足感の高いスキルとビルドが加わることで、私たちも想像していなかった「ロングワニ」というレネクトンの新たなファンタジーが誕生しました。 

オーロラはスレッシュ、シンドラ、そして過去のセットの複数のコスト5ユニットからアイデアを拝借し、そこにベンチから攻撃するというひねりを加えて、安全なスケーリングキャリーとして独特な強さを感じられるようにしました。 

アーゴットはいわば… 戦利品を吐き出すゴミ処理装置でした。そんなの、楽しくないワケがありませんよね? 

ザックはリロール中に嬉々としてスライムを集めるという新たなメカニクスをもたらし、テーマにもぴったり合っており、カオス状態で早くリロールしすぎて重要なユニットを取り逃すミスも、たまに起きる程度に抑えられていました。ご心配なく。みんなやってます。 

最後に、ガレンでは紋章を持たなくてもチャンピオンに特性ボーナスを付与できるという、過去に類のない、全く新しいメカニクスが導入されました。これによって終盤の上限突破や「ブームボットツイステッド・フェイト」のような自由度の高いキャリーの幅広い可能性が開けました。 

これらのチャンピオンは非常に良かったと思っています。彼らは大胆で記憶に残り、とても「サイバーシティ」らしいものでした。

とはいえ、すべてのコスト5ユニットが完璧だった訳ではありません。

コブコは少しやり過ぎていました。彼には第2形態に変身するボスであるというテーマを設定していました。そして超高電圧・高パワーでリリースされ、その後バランスを取るために弱体化され、そしてあらゆる面で輝きを失ってしまいました。そこで私たちは、彼を完全にリワークしました。振り返ってみると、もっと早めに弱体化を行って、彼の個性が際立つ部分にパワーを集中させるべきでした。

サミーラは派手さはありましたが、影響力は大きくありませんでした。彼女は他のコスト5のなかに埋もれていました。コスト5のスーパースターが少ないセットなら、もう少し活躍できたかもしれませんが、今回は残念ながら印象が薄くなってしまいました。

最後はヴィエゴです。ヴィエゴは前回のラウンドで倒した最も強力な敵(または味方のゴーレム)を召喚するという点が興味深かったものの、そのために強力な範囲ダメージスキルを使用する必要があり、バランスを取るために、召喚ユニットのパワーを大幅に低下させることになりました。 

これらのチャンピオンは大きく目標を外した訳ではありませんが、これらは将来のコスト5ユニットについて考える際に役に立つ知識となるでしょう。 

リバイバル:リミックス ランブル 

皆さん、こんにちは!リバイバル(および開発におけるその他要素)のプロダクトマネージャーのRiot Xtnaです。「リバイバル:リミックス ランブル」を終えるにあたり、時間を取って、上手くいったものや意外だったもの、将来のリバイバルについての私たちの考えについてお話しします。

まずはバッグサイズ(チャンピオン総数)から!「リバイバル:リミックス ランブル」で最も大きな変化は共有バッグが復活したことで、その反応は明確で、プレイヤーは試合ごとのバラエティーが増えたことを歓迎していました。また過去の共有されたうえで拡大したバッグのリバイバルと比較して、コスト4とコスト5のプールを縮小しました。なぜでしょう?まず初期のリバイバルでは、終盤戦は「★3のコスト4かコスト5を作れるか?」に収束していました。これはエキサイティングではあるものの(「チョンクのお宝」など)、すべてのリバイバルをこうしたくはありませんでした。そこで「リバイバル:リミックス ランブル」では、このハイロールなファンタジーは実現可能なままにしながらも、象徴的なチーム構成を再結成したり、新たなオーグメントを使った新たなチーム構成を可能にしたりと、プレイヤーが他のゴールも目指せるようにしました。 

次はテーマです。リバイバルするセットを選択する際には、テーマの差別化を常に優先していましたが、「リミックス ランブル」ではリバイバル内の新鮮味も重要であることが証明されました。プレイヤーが「サイバーシティ」の隣で目新しい何かをプレイしたがっていることは分かっていましたが、音楽や「ヘッドライナー」、そしてHeartsteelの復活は、まさに他のお気に入りのキューに対する確固とした代替キューに必要だったエネルギーブーストとなりました。リバイバルラダーは通常のランクキューほど激しくはなく、プレイヤーは新たなコンボを試したり、Heartsteelでどこまでやれるかを試すことを楽しんでいました。チャートを賑わせたのは彼らの楽曲(レコード)だけではありませんでした。中国では本物の記録(レコード)も打ち立てられ、リバイバルモードのプレイヤー数が過去最高を記録したのです。

まだまだリバイバルでは毎回学ぶべきことがあり、皆さんからのフィードバックが私たちの意思決定に大きな影響を与えています。だからこそ、リバイバルをプレイして完璧な「ヘッドライナー」を見つけ、Heartsteelで最大のリターン獲得に挑戦してくれた皆さんに感謝いたします! 


これで今回の学びの記事は終了です。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!まとめたら1冊の本になりそうな長さでしたね。これらの記事は一人で書けるものではないので、この記事やセットで手伝ってくれたチーム全員と、長年に渡ってTFTを形作る作業に貢献してくれている無数のプレイヤーの皆さんに感謝いたします。次のセットの「K.O. コロシアム」についても、まもなく詳細をお伝えいたします。それでは、また次回!