/Dev TFT:マジック・アンド・メイヘムから学んだ教訓

ゲームデザインディレクターのRiot Mortが「マジック・アンド・メイヘム」を振り返ります。

要約:この記事では以下のトピックに関する教訓を取り上げていきます:


セットのテーマ:陽気な創造性にあふれる「マジック・アンド・メイヘム」の雰囲気は楽しげでしたが、次の「Arcaneの世界へ」では作品に忠実な雰囲気を目指していくため、「ギズモ&ガジェット」の時よりもさらにArcaneに寄せたセットとなるでしょう。 

チャーム:今回のセットメカニクスには学ぶべきポジティブな側面が数多くありました。この項ではチャームの良かった点、現時点までの調整手法、そして必ずしも存続させない理由について触れていきます。 

クォーターセット:大型パッチだった14.18(通称「クォーターセット」)などの大型プロジェクトは、ゲームの改善とフィードバックの迅速な(ミッドセットのような固定タイミングでない)反映を願う開発チームの意識から生じたものです。このパッチではセットリリースなどの大きな区切り以外のタイミングでコンテンツを実装し、新要素の「慣らし時間」を確保できるようにしました。 

リリースパッチ:シンドラ:ここでは今セット最大級の反省点について触れていきます。舞台裏を濃密に描いた項になっているので、シンドラがああなった経緯が気になる方はぜひご覧ください。 

チャンピオンオーグメント:優れたチャンピオンオーグメントとは、対象チャンピオンのプレイ方法を根本的に変えるもので、さらに比較的ニッチなケース──つまりゲーム状況と合致する時にのみ──選択肢に入ってくるべきものです。「マジック・アンド・メイヘム」のチャンピオンオーグメントで学んだ教訓は、次のセットに活かしていきます! 

高リスクオーグメント:高リスクオーグメント(進化した冒険や金のタマゴなど)には機能したもの・しないものがありましたが、ここまで大胆な試みができたことは誇らしく思っており、一部の成功例は今後も活用していきたいと考えています。なお「Arcaneの世界へ」では高リスクの「特性」が登場します!

ポータル:試合単位での変化幅を生み出してきたポータルとは今セットを最後にお別れし、新セットでは「望ましい効果」を重視する別の要素に移行します。

リロールvsファスト8:全コストのチャンピオンに勝ち筋を用意するという目標に変わりはありませんが、コストごとのリスク/報酬を精査した結果、現行のパワーフレームワークには一部修正が必要だと判明しました。 
トッカーの試練:「Arcaneの世界へ」のリリースパッチで再登場します!今回はプレッシャーなく新セットに慣れてもらうための導入モードという意味合いが強くなっています。


セットのテーマ(Rodger & Tori)

従来の教訓記事はゲームデザインチームの観点から語られてきましたが、前セットはアートとテーマの重要性が大きかったため、教訓記事の中でも取り上げました。これは「マジック・アンド・メイヘム」でも同様だったので、今回もゲームプレイアートディレクターからセット誕生の経緯と確立までの道のりを語ってもらいます。

静けさ漂う東洋ファンタジーの世界「インクボーン フェーブル」から騒がしく愉快なカオス「マジック・アンド・メイヘム」への移行は、同じファンタジー世界ながら極めて対照的なものとなりました。私たちが「マジック・アンド・メイヘム」のテーマから学んだ教訓は以下のとおりです:


  • アートの観点から見た「マジック・アンド・メイヘム」は、かつてないほど作っていて楽しいテーマでした。マジトリアムを構築する上ではテーマを強く意識し、特にドラフトラウンドはこれまで以上にゲームプレイと結びついたデザインにしました。あの場所はマジトリアム城の中庭で、環状に配置された窪みは各オリジン特性を表しています。

  • 自由な魔法の世界という設定は、私たちに「魔法とは何か」を考えさせ、創造力を掻き立ててくれました。「マジック・アンド・メイヘム」の世界ではシュガークラフト、ハニーマンシー、ポータルがいずれも魔法とみなされます。LoRからノラを登場させられたこともサプライズになったのではないでしょうか。一方でウィッチクラフト、パイロ、凍結、そして魔法のワンド的存在の「チャーム」などは、分かりやすい魔法要素としてこの世界における魔法のバランスを整えてくれました。



  • 今回のテーマはセットメカニクス「チャーム」のデビューにうってつけでした。タクティシャンの後ろを小さなワンドが飛び回るなんて、これぞ魔法という感じですからね!なお、チャームのゲームデザインと実装については後ほど別の項で取り上げます。

  • このセットで私たちが目指したのは、豊かな広がりを持つIPに認知度が高いテーマを重ね、そこに独自性のある味付けを加えるというものでした。マジック・アンド・メイヘムのテーマは、受け手や地域によって評価が分かれています。テーマ的に言えば、ハニーマンシーやシュガークラフトなどはTFTらしい愛嬌/かわいさを持つ特性だったと言えるでしょう。しかしそうした側面に偏りすぎていたのではないかというフィードバックもありました。エッジィ/ダークな特性がエルドリッチのみだったという意見もそのひとつです。また凍結やパイロのような定番魔法が足りないという声もある一方で、定番魔法でない魔法が特に気に入ったという嬉しい声もありました。こうした声は、テーマというものの難しさをよく表しています。言い換えると、新セットが毎回あなたのお気に入りテーマになるという約束はできませんが、私たちが新たなテーマ領域に挑み続け、時には予想外で楽しいものを、時には馴染み深く懐かしいものをお届けしていくことは約束できる、ということです。では最後に、「マジック・アンド・メイヘム」はあまり好みじゃなかったというアナタに向けて、とっておきの情報をお届けしましょう…。

  • 「Arcaneの世界へ」ではTFTのコア部分を維持しつつも、正統的「Arcane」の世界をとことん追求していきます。「ギズモ&ガジェット」がピルトーヴァーとゾウンをさらりとアレンジしたセットだったとすれば、「Arcaneの世界へ」はテーマとゲームプレイの両面において「Arcane」という作品を直接的に表現するセットとなります。


チャーム

「マジック・アンド・メイヘム」のチャーミングなセットメカニクス

まずはチャームの良かった点を挙げてみましょう:

  • 影響度が比較的低い一方でプレイしていて楽しいメカニクスになった 

  • テーマとの相性が良かった

  • 複雑性が比較的低い(買う→効果発動)一方で、習熟の余地も充分にあった(チャームを狙ってリロールするタイミング、レベル上げタイミングの新メタなど)  

  • ほとんどが良い効果で(体力を対価にリロールするような呪いのチャームは少なく)、必ずプレイヤー側に最終決定権があった(いつ買うかを自由に選べた)

  • 「インクボーン フェーブル」と遭遇の組み合わせで生じていたゴールドインフレを、僅かながらも低減する要因となっていた(購入することで効果が発生するため) 

  • チャームを持続的に追加/削除し、イテレーション(試行錯誤のループ)を回してセットメカニクスを改善し続けられた

ここで重要なのは最後のポイントでしょう。そしてチャームの悪かった点は個別のチャーム単位であったものと解釈しています。たとえばリリース時の「必死の嘆願」や「ドラゴン召喚」などは強すぎましたし、「アーティファクティネート」はまるで使い物になりませんでした。チャームは総合的に見てTFTにとって優れたメカニクスであったとは思いますが、それは必ずしも続投を意味しません。ギャラクシーや選ばれし者など、最高のセットメカニクスはプレイヤーにもっと、もっとと願わせるものですから。

パッチ14.18 - クォーターセット

パッチ14.18は疑いようもなく巨大でした。進行していた複数のプロジェクトがひとつのパッチに集約されたこのパッチは、(非公式ながら)クォーター(四半期)セットとも呼称されていました。ここでは同パッチが生まれた経緯からリリースまでを最初から見てみましょう。

遠い遠い昔のこと、TFTにはミッドセットというものが存在していました。セットの中間地点でのマンネリ感を打破して新風を吹き込む大型パッチのことです。私たちがミッドセットを辞めた理由はたくさんありますが、そのひとつに「ゲームを即座に改善できる変更を、指定時期まで待つ必要がない」というものがありました。できるのならもっと早くパッチに追加すればいい、ということです。

そしてパッチ14.18のクォーターセットで、私たちはさまざまなチームで取り組んでいた多数の変更をまとめてリリースしました。TFTというゲームを一層改善するための案や、熱心なプレイヤーにもっとワクワクしてもらえる案を詰め込んだわけです。クォーターセットのようなプロジェクトは、ゲームの改善とフィードバックの迅速な反映を願う開発チームの意識から生じたものです。

さて、パッチ14.18といえば欠かせないトピックがもうひとつあります。金のフライパンです。クラス系特性をクラフト可能な紋章とする案は時間をかけて取り組んでいたのですが、ゲームに与えるインパクトが非常に大きいため、実装タイミングは(セットリリースから)ズラしたいと考えていました。新コンテンツに慣れる時間を確保するためにあのタイミングでの実装となったわけです。狙いとしては、パッチごとに新チャームを追加していったのと同じです。ただし金のフライパンはチャームと異なりTFTの恒久要素だったので、導入のタイミングはクォーターセットが最もふさわしいと判断しました。

クォーターセットは総合的には成功だったと考えていますが、問題が無いわけではありませんでした。たとえばグウェンとウーコンの失速。これはふたりのパワーレベル不足ではなく(リリース時のグウェンはもっと弱い状態でした)、プレイヤーがユニットの扱い方を学び直さなくてはならなかったためです。ウーコンといえばガーゴイル ストーンプレート、グウェンといえばブラッドサースターのような定番アイテムの常識が突如として変わってしまったのが原因でした。これを踏まえ、今後はチャンピオンの扱い方をゼロから学び直さなければいけないようなリワークをしないようにしていきます。最後はヘカリムです。彼は一夜にしてゴキゲンかつ強力なチャンピオンとなりましたが、リリース直後の状態は強すぎました。今後はリワークが過剰になっていないかを改めて意識していきます。

一度にあれほど大量の新コンテンツをリリースしたため荒い点もありましたが(シェンのチャンピオンオーグメント、妖精が強すぎたなど)、パッチ14.18は規模を考慮すれば比較的スムーズなリリースだったと考えています。フォローアップも迅速かつ小型のBパッチで済みました。

リリースパッチ:シンドラ

教訓記事でこれに触れないわけにはいかないでしょう。「マジック・アンド・メイヘム」のリリース時には、他の追随をまったく許さない──OPだったリリース時のカサディンたちですら歯牙にもかけない──絶対的チャンピオンがいました。本セットのシンドラには「無限の伸びしろを持つ2コスト」という独自の魅力がありましたが、それゆえにバランス調整が難しいチャンピオンでした。自身が主役でない構成にも組み込めることと、条件が揃えば強さを発揮できることを両立させなければならなかったからです。しかし難易度は高かったものの、私たちはリリース初日の時点でもっとうまく調整できてしかるべきでした。要するに私たちの失敗です。しかも今回は難しい要因もいくつか重なっていました。次回は対処方法を把握しているのでしっかりと対処していきます。ここで経緯を改めて説明してみます。

「マジック・アンド・メイヘム」がPBEに実装され、私たちは最初のパッチでシンドラをバフしました。なんということでしょう。しかもこの時のシンドラは既にリリース当時よりもはるかに強い状態でした。ひとまずここではスーパーシンドラと呼ぶことにしましょう。バフを受けたスーパーシンドラはPBE第2週のデータでも急上昇していましたが、実は過剰な活躍というほどではありませんでした。別のOPだったダイアナがPBEデータを歪めるほどの活躍を見せていたためです。当時凄まじく強かったダイアナの構成にシンドラが入っていなかったため、想定したほど数値が跳ね上がらなかったのです。 

そして7月22日、シンドラの構成が平均順位4.3に達したことを受け、私たちはPBEパッチでシンドラに小型ナーフを加えます。そして奇妙なことに、シンドラの定番構成はそれ以降のPBEデータ上で不可思議なほど弱い状態になりました。次に24日のPBEアップデートでスーパーシンドラに大型のナーフを実施し、同時に攻撃速度特化ビルドに関するバグを修正しました(後にここが重要になってきます)。 

そしてマジック・アンド・メイヘムのリリース前日。PBEサーバーでのシンドラは、アイテムビルドが最適化途中だったにもかかわらず非常に良い成績を残していました。このため私たちはAパッチで彼女をナーフします。Aパッチでの変更点がライブサーバーにリリースされると、対象のファイルはミッドパッチで変更できなくなるのですが、それを理解した上でのナーフでした。この時はPBEでの理想ビルド(ジュエル ガントレット、ショウジンの矛、ナッシャー トゥース)に基づいてシミュレーションを行い、ナーフでシンドラの総合的なパワーを6%引き下げることとし、さらにカルマ(定番ペアユニット)にも多少のナーフを加えました。こうしてスーパーシンドラが(軽いナーフとともに)ライブサーバーに実装されると、プレイヤーはPBE時代には使われなかったか活躍できていなかったアイテムビルドこそが最適解であることを発見します。元々強力だったビルドは大量の弓を使うことでさらに最適化され、ついにスーパーシンドラがリリースパッチに顕現。おまけにBパッチとLP減少に対する完全耐性まで備えていました。 

要因は他にも幾つかありましたが、これが大筋です。振り返ってみれば選択肢はいくつかありました。Aパッチでは変更せずにリリースし、データを収集した上でBパッチを当てる。Aパッチとは別のファイルを変更し、Bパッチで仮対処する(これは100%やるべきでした)。(定番構成の)周辺要素をナーフする。しかしいずれの選択肢にもメリットとデメリットがありました。スーパーシンドラにAパッチで変更を入れなければリリース後48時間にわたってシンドラがもっと強い状態で暴れることになりますし、シンドラ定番構成の周辺要素をナーフすれば対象アイテム/オーグメント/チャンピオン/特性がシンドラ不在時に使い物にならなくなります。Aパッチでは変更しなかったファイルでシンドラをナーフするにしても──これはやるべきでしたが──やはり状況は複雑です。まだメタも若く、リリース2日の時点では決断するだけの確証が持てませんでした。しかし私たちの知る限り、その後もシンドラのカウンター戦術や、彼女の牙城を揺るがす新構成は出てきませんでした。

いずれにせよ、本項はシンドラに関して言い訳するためのものではなく(あれは私たちのミスでした)、ライブサービスゲーム──TFTのようにゲームバランスがゲームプレイの核となるようなゲームでは特に──の開発が持つトリッキーな側面を紹介する意図で記したものです。

チャンピオンオーグメント

優れたチャンピオンオーグメントとは、対象チャンピオンのプレイ方法を根本的に変えるもので、さらに比較的ニッチなケース…つまりゲーム状況がかみ合った場合にのみ選択肢に入ってくるべきものです(例:グインソー レイジブレードがある状態で、ステージ2-1のオーグメントにデジャヴが出現した、など)。

過去に成功を収めたチャンピオンオーグメントといえば、「モンスターアタック!」の時空の剣(シェン)や、本セットのデジャヴが挙げられるでしょう。これらはいずれもアイテムビルドが変わるだけでなく、ユニット配置や構成まで変化させるオーグメントでした。

一方で成功と呼べないチャンピオンオーグメントからは教訓が得られます。たとえば勝利への回転(ウーコン)のようなオーグメントからは、「アイテムビルドを根本的に変えないチャンピオンオーグメントは、私たちが求めるダイナミクスを生み出せていない」ということを学びました。タンクのチャンピオンオーグメントが、タンク性能はそのままに火力を引き上げる効果だったら、対戦相手はひたすらにフラストレーションを感じることになります。今セットのブリッツクランク、エリス、ヌヌのチャンピオンオーグメントについても同様のことが言えるでしょう。時には愉快ですが、再登場させるにはフラストレーションが強すぎます。

そして最後に1コストのチャンピオンオーグメントについて。これが存在したセットは、チャンピオンオーグメント自体がセットメカニクスだった「モンスターアタック!」を除くと「マジック・アンド・メイヘム」が初めてでした(これは3コストも同様ですが、今回の話題からは外れるため割愛)。これは大胆な実験となりました。一般的に1コストのチャンピオンオーグメントはステージ3-1前後で強みを発揮しはじめ、しばらくは圧倒的な強さで周囲を圧倒しますが中~終盤には失速するものです。しかし今回の一部1コストオーグメントは、ステージ5でも活躍していました。


このため今後は、チャンピオンオーグメントに対するアプローチを変更していきます。まず1コストチャンピオンオーグメントはシルバーティアに設定し、終盤に影響力を出せないようにします。2コスト、あるいは3コストのチャンピオンオーグメントは継続していきますが、本領域ではさらに追加拡張も検討しています。こちらはまた後日発表する予定です。今はひとまず、他のオーグメントに関する教訓ともうまく馴染むものであるとだけ言っておきましょう。

ハイリスクオーグメントvsハイリスク特性

「マジック・アンド・メイヘム」では実験的なセット構成に挑み、「レコニング」(セット5)以降で初めてハイリスク特性のないセットとなりました。本セットでは代わりにいくつかのハイリスクオーグメントを用意し、プレイヤーが愛し期待する「大きなリスクを取って豪華報酬を狙いに行く」要素としています。

この実験自体がリスクの高いものでしたが、私たちはハイリスクなゲームプレイを「毎回決め打ちで」狙えない方向にTFTをシフトしていきたいと考えています。この手法であれば特性構造の相関関係から切り離すことができ、極端なオープンフォート(意図的にボードを空/ほぼ空にする)戦略も使えるようになるでしょう。こうしたリスクはより個性的な報酬を生み出し、ハイリスクなプレイスタイルの新しい形を生み出しうるものです。

この点は総合的に見て機能したもの・しないものが混在する結果となりました。ゴールデンクエスト、進化した冒険、特性トラッカーは独自のハイリスクプレイをプレイヤーに要求するもので、非常に斬新な報酬も提供していましたが、一方で勝利の幸運などのオーグメントは完全オープンフォートで進行すればよいフォーチュン特性のような状態でリリースされ、報酬にも新規性がありませんでした。

ハイリスクオーグメントにワクワク感を持たせるには報酬に見合うリスクが欠かせませんが、勝利の幸運やゴールデンクエストなどのオーグメントにはそれが不足していたのです。仮にこうしたオーグメントの報酬を金のタマゴレベルまで引き上げるのであれば、リスクももっと上げる必要があるでしょう。いずれにせよ、挑戦できたことは誇らしく思っており、ここで得られた成功は今後にも活かしていきたいと考えています。ちなみに「Arcaneの世界へ」にもひとつハイリスク特性が登場しますが、こちらは盤面を極めて非合法な状態にしてくれるものとなっています。

ポータル

TFTの新規プレイヤーが許容できる複雑さの上限についてはインクボーン フェーブルの教訓記事でも触れた通りですが、ひとまず次セットではこの点は心配無用です。前回の当該項ではポータルの存在が新規プレイヤーにとって大きなハードルとなっていたことに触れました。短時間のうちにポータル説明文をすべて読み、決断を下す必要に迫られるためです。これは不慣れな人には忙しすぎるため、あれから私たちはポータルの代替案製作に取り組み始めました。

そしてその新案が「Arcaneの世界へ」で初登場します。それが何かを発表する前に…ポータルはファンの多い要素でもあるので、改めてポータルが抱えていた問題の概要をおさらいしておきましょう。

  • ポータルは人気・望ましさの高いものとそうでないものが明確に分かれており、人気トップ5とワースト5には凄まじい差があった。 

  • ポータルは新規プレイヤーの参入ハードルとなっていた。

このような問題を抱えている一方で、ポータルには「試合展開の幅を広げる」という大きな価値がありました。これは誰しも思い当たる節があるでしょう。そこで私たちは「試合展開の幅を広げる」部分はそのままに、複雑さを低減し、試合展開の幅を望ましい方向に寄せて(良いポータルを増やし、悪いポータルを減らして)いきたいと考えています。

「Arcaneの世界へ」では試合開始時のオプションを10種用意し、それぞれをセットに登場する(重要な)キャラクターと結びつけています。登場キャラクターとゲーム内での効果、そして出現率については以下の抜粋リストをご覧ください(情報は変更される可能性があります):

  • ジンクス:通常のTFTゲーム(40%)

  • スカトルクラブ:カニゲーム(スカトルパドル5%、カニレイヴ5%)

  • [????]:流浪のトレーナー(3%)

  • ジェイス:プリズムゲーム(最初がプリズムオーグメント5%、最後がプリズムオーグメント2.5%、すべてプリズムオーグメント2.5%)

他にもすべてゴールドオーグメント、戦利品サブスクをはじめサプライズが控えていますが(詳細は後日のお楽しみ)、これで雰囲気は伝わったのではないでしょうか。ご覧の通り、選りすぐりの人気ポータルの効果が揃っています。大半の試合が比較的普通(プリズムゲームは現状でも起こり得るため普通扱いです)の試合になるよう意識しましたが、一方では多くのプレイヤーに愛されていた刺激的要素は時折登場するようにしています(流浪のトレーナー、カニレイヴ)。そして、中~低人気だったものはすべてカットとなりました。あなたが一番楽しみにしている効果、そして「誰がどの効果を担当するか」の予想をぜひ聞かせてくださいね!

リロール vs ファスト8

まず、全コストのチャンピオンに勝ち筋を用意するという目標は今も変わっていません。ステージ3-1~3-3でリロールして1コストを集め、そこから一気にレベルを上げてメイン特性を中心に盤面を強化していく構成はゲームに存在するべきです。これは2コスト、3コストも同様です。しかし他方ではレベル8、9に直行して4、5コストを中心に戦う戦略もまた有効であるべきです。うまくプレイすればどのプレイスタイルでも戦えることが重要なのです。

そうした原則は変わりませんが、一方では変わったこともありました。たとえばリロールチャンピオンの完成タイミングが早くなったことです。今や★★★2コストはステージ2-1~3-2で完成することもあり、時には★★★3コストがステージ4-1を待たずに完成することもあります。これほどタイミングが早いと、★★★3コストと★★5コストを同等のパワーレベルに置くことはできません(現行フレームワークで両者はそのように位置づけられています)。

このため本件についてはおそらく、完成タイミングを踏まえてパワーフレームワークを調整することになります。今後はどちらの戦略も有効に機能するようにゲームバランスを引き締めていきますが、★★5コストについては狙う価値のあるパワーを用意する必要もあると考えています。終盤戦向けチャンピオンは構成の主役であるべきですから、やっと完成させたのに惨敗するのはゲーム体験として望ましくありません。

トッカーの試練

TFT史上初の(実験的)PvEゲームモード「トッカーの試練」は、リリースから20日間で1300万時間という圧巻のプレイ時間を記録しました。このデータが何を意味するかは時間をかけて考えていくつもりですが、ひとまず今回は「トッカーの試練」が次のセットで果たす役割についてお話ししましょう。

「トッカーの試練」は新セット「Arcaneの世界へ」の導入モードとして復活します。

多くのプレイヤーの方々と同じく、私たちもTFTのPvEモードには大きな価値を見出していました。そこで今回は「トッカーの試練」を「Arcaneの世界へ」のセット習熟を主な目的とする導入ツールとし、新規プレイヤーと低負荷環境でセットに習熟したいプレイヤーの双方に役立つものにしていきます。

「トッカーの試練」は「Arcaneの世界へ」セットに(ほぼ)同じ仕様で登場しますが、今回はノーマルモードのみ(カオスなし)となります。この決定の背景にはいくつかの理由がありましたが、そのうちのひとつはノーマルモードがTFT新規プレイヤーにとって重要な習熟ツールであることでした。タイマーが存在しないため、プレイヤーはTFTの複雑な要素について考えを巡らせ、各要素をじっくりと学び、ありとあらゆるツールチップを読むことができます(これは怪しいですが、少なくとも読む時間はあります)。今回の「トッカーの試練」が、ダブルアップモードの相棒候補が新セットに親しむきっかけになることを願っています。もちろん、TFT PvEモードの未来についても開発に進展があり次第お知らせしていきます!


いやはや、長くなってしまいました!ここまで読んでくれたなんて、もう驚きです。毎度のことながら微妙なニュアンスや複雑なディテールを詰め込んだ内容になりましたが、本稿を読みきってくれたことに、そしていつもTFTを進化させるフィードバックを寄せてくれることに深く感謝します。さて、次のセットに向けて輝くアイデアがたくさん待っているのでそろそろ行きますね。それでは、また次回お会いしましょう!