/Dev TFT: 「Arcaneの世界へ」から学んだ教訓
毎セット恒例ですが、セットで気に入ったところ、そうでもなかったところ、良かったこと、問題点、その他色々な内容を振り返るブログを再びお届けします。振り返り記事はいつも内容の濃いものですが、1年に3つのセットをリリースしている現在では、セットとTFT全体に関して長期的なタイムラインを踏まえた私たちの考えをお話しする場でもあります。今のTFTは規模がかなり大きくなっているので、包括的な内容となるようにチーム内の他のメンバーにも話をしてもらいます。
それでは、雨の日に合うLo-fiのBGMをかけて、記事を読んでいきましょう!
要約:この記事では以下のトピックに関する「Arcaneの世界へ」の教訓を取り上げていきます:
セットとしての「Arcaneの世界へ」の着地点:『Arcane』は手に汗握る迫真の物語で、キャラクターを軸に展開しますが… 一方、TFTにいるのは木製の剣を持ったペンギンです。私たちは両者をどうやって融合させたのか?果たして、それは上手くいったのか?答えは、皆さんがどれくらいスミーチとセヴィカを好きかによりますが、それと同時にどれくらいロリスとステブを楽しめたかにもよります… アニメシリーズと同時期のリリースだったためPBEの期間が短縮され、私たちが望んだほどにはバランス調整を詰めることができず、チェックをすり抜けたバグも存在しました。
コスト6ユニットでセットを進化:コスト6ユニットなしでの初期リリースは未完成に感じられましたが、今回取った段階的なアプローチが最も妥当でした。
アノマリーとチャンピオン進化のメカニクス:アノマリーのメカニクスは大成功で、初期の問題を解決して以降、特に良くなりました。各チャンピオンのファンタジーを新しいアプローチで展開させるのはとても楽しかったので、今後もやってみたいと思っていますが、次のセットでは行いません。
オーグメントのデザイン:ハイリスク・ハイリターンなオーグメントを作り出す新たな方法からチャンピオンオーグメントに関する教訓まで、オーグメントに関しては小規模ながらも複数の学びが得られました。
開幕時遭遇:ポータルの代わりにこのメカニクスを採用することにはトレードオフが存在するのは明らかですが、やはりメリットの方が上回っていると思います。それを踏まえた上で、今回のセットでは開幕時遭遇として良いものと悪いものとは何かについて学びを得られました。
ケミ長者:「ケミ長者」はキャッシュアウト後にユニットが直接的に強化されるという新しい形の高リスク特性で、私たちにとっては重要な試みでした。良かった点やイマイチな点などたくさんの教訓を得ましたが、次のセットでは異なるスタイルのキャッシュアウト特性に移行しようと思います。
複数選択肢のあるオプション:「フォームスワッパー」は複数の選択肢を持つ特性としては最も上手くいきましたが、プレイヤーの認識やオプション、各形態の勝率差の印象に関する課題などで貴重な教訓が得られました。
近接チャンピオンのパワーのスケーリング:スターレベルを上げた際に近接キャリーが獲得する体力の大きさが理由で、体力と攻撃力の上昇から恩恵を得る近接チャンピオンの★★と★★★の差が大きくなっていました。解決策はありますが、実装されるまでには少し時間がかかるでしょう。
タンクと耐久力:タンクたちは4種類のスキルを持っていますが、そのうち耐久力を増加させるタンクのパフォーマンスが最も低くなっていました。今後は耐久力タンクの調整レバーを増やすか、戦闘を通して彼らの価値を維持できるような他の方法を模索します。
「獣たちの宴」のリバイバル:「獣たちの宴」の現代化には課題が伴いました──その一部について、この記事で詳しくお話しします。
セットとしての「Arcaneの世界へ」の着地点
『Arcane』は手に汗握る迫真の物語で、キャラクターを軸に展開しますが… 一方、TFTにいるのは木製の剣を持ったペンギンです。TFTと人気のアニメシリーズの架け橋となるセットを開発するということは、これまで以上にダークかつ大胆で、緊張感のあるセットを作り出さなければならないことを意味していました。6つ目のセットの「ギズモ&ガジェット」にもピルトーヴァーとゾウンへのオマージュがありましたが、「Arcaneの世界へ」はそれとはまったく別物でした。プレイヤーが『Arcane』の世界を追体験しつつ、自分だけのストーリーで書き換えられるようにするという高い目標のもとにデザインされており… それをコンバージェンスで実現する必要がありました。果たして、私たちはどのようにそれを実現し、またその結果はどうだったのでしょうか?
まず最初に、私たちはロスターを構築しました。「Arcaneの世界へ」のラインナップは大きく3つに分けました。『Arcane』に登場したキャラクター、ピルトーヴァーとゾウンの出身者、そしてルーンテラ全土からの精鋭です。それぞれを3分の1ずつとすることで特性構造と幅広いゲームプレイのバランスを取りました。このおかげで、TFTを初めてプレイする『Arcane』のファンでもすぐに「執行官」のチームを構築して、「ケミ長者」で危険なシマーを使った実験を行い、超強力なコスト6ユニットの入手を目指すことができました。その一方で、長年のTFTファンもノクサスの「征服者」や、ルーンテラ全土から集まったお気に入りの「使者」を使ってチームを構築することができました。この構造で『Arcane』ファンとベテランTFTプレイヤーの双方に応えることができましたが、完全新規のチャンピオンを10体開発するのは簡単なことではありませんでした。

10体の新キャラクターの開発はエキサイティングな試みでしたが、開発チームにとって大きな負担となり、一部の新ユニットは、『Arcane』をそれほど好きではないプレイヤーにとっては少し物足りないものになったかもしれません。ロリスやステブたちを追加するのと引き換えに、ヤスオやシンドラなどLoLの人気チャンピオンを含めるチャンスがありませんでした。そしてロリスやステブなどの新ユニットは、人気チャンピオンと同じレベルの熱狂をもたらすほどの深みは持っていませんでした。とはいえ、セヴィカやスミーチなどのユニットが瞬く間に人気になったのは大きな成果でした。
ユニット以外に、『Arcane』から生まれたメカニクスもありましたが、別途それを取り上げるセクションがあるので、ここではテーマについてだけ触れましょう。現在のTFTにおけるセットメカニクスは、テーマを表現し、各セットの異なる“セットらしさ”を感じさせる比較的小規模な要素です。分かりにくいかもしれないので、このロジックを「Arcaneの世界へ」にざっくり当てはめてみましょう。アノマリーはステージ4-6で登場して、様々な方法で1体のチャンピオンを強化しますが、ゲーム内容を大きく変えるものになることは想定されていないメカニクスです。あくまで、オーグメントの入れ替えや新ユニットの追加などと並ぶ、セットの個性の一要素に過ぎません。アノマリーはメタを大きく変えるためのものではなく、『Arcane』の物語の重要なシーンをTFTへ持ち込むためのものでした。アノマリーに飲み込まれたエコーが、ジンクスについての理解を深めて帰ってきて…しかも目からレーザーを発射?これぞTFTらしさが全開の一幕ですが、『Arcane』の要素も保っていました。
『Arcane』のリリースはTFTのみならず、ライアット全体にとって重要な出来事だったので、私たちの計画もそれに徹底的に合わせる必要がありました。プロセスが複雑化したのは言うまでもなく、アニメ公開前のセットについての言及やリリースの制約、そしてPBEサイクルの短縮によって、リリース初日時点までのバランス調整が難しくなり、いくつかのバグがチェックを漏れることになりました。しかし、リリースのタイミングを合わせたことで良い部分もあり、そのうち1つはコスト6ユニットを『Arcane』の物語内での登場に合わせてリリースできたことでした。エピソードの展開に合わせてセットも進化させていくことで、可能な限り原作に忠実な形でTFTのプレイヤーへ『Arcane』の物語を届けることができました。
進化したセット / コスト6ユニット

メルの超クールな魔法の力をシーズン2第3幕が公開される前に見せてしまうなんて、そんなことできませんよね?
キャラクターが物語に及ぼす影響の大きさから、「Arcaneの世界へ」に強力なコスト6ユニットを含める計画は常にあったものの、タイミングがすべての鍵でした。進化後のセットのリリースによって私たちのビジョンは完全に実現されたわけですが、言葉を返せば、初期バージョンのセットをリリースした際には正直なところセットとして未完成だと感じられました。「ビクターは?ワーウィックは?」という声を何度耳にしたことか数え切れません。「きっとマルザハールがビクターと入れ替わるんだ」といった、(たしかに一理ある)プレイヤーの予測を見るのも楽しかったです。しかし最終的には、この段階的なアプローチが最も納得のいくものでした。
また、プレイヤーレベルにかかわらず、アノマリーが出現したら、誰もがコスト6ユニットにアクセスできるようにしました(ビクターはアノマリー出現より少し早いですが)。これによって、パワーレベリングするかリロール戦術を取るかにかかわらず、どのプレイヤーにも戦闘の展開を大きく変えるユニットを手にするチャンスを提供できました。同時に、コスト6がただパワー上限を崩すだけで、リロール構成が役立たずになる事態も回避できました(ボード全体のスタン、敗退保護、とても恐ろしいワンちゃん)。
しかし、このアプローチにはデメリットもありました。レベル10に到達するかゴールドを貯め込むか以外に、コスト6ユニットを手にするためにやれることがなく、運に任せるしかありませんでした。そして、ゲームを大きく変え得るコスト6ユニットを自分が手にした瞬間の気分は最高でしたが、アノマリーの出現直後に対戦相手に獲得されたときには辛いものがありました。最終的には、このアプローチのデメリットは最小限だったと結論付けました。このシステムによって、すべてのプレイヤーにパワーレベリングの軍拡競争を強いることなく、コスト6ユニットへのアクセスを提供できたのですから。
次は、パワーバランスについてお話しします。私たちの目標はシンプルで、コスト6がショップに登場した際には、特性シナジーを犠牲にしてでも、ボードにそのユニットを出したいと思わせることでした。そのためには、コスト6ユニットが強力かつ自由度が高く、アイテムがあってもなくても活躍できる必要があり、かなり意欲的な目標ではありました。果たして上手くいったのでしょうか?厳密にはそうとは言えません。
リリース時点で、コスト6ユニットはユーティリティー性能が高すぎました。これらのユニットは特性面に貢献しないことから、万能性を高めておく必要があると考えて、その補償をやり過ぎてしまいました。私たちの考えとは裏腹に、プレイヤーは純粋にその効果だけを目的に入手しようとして、ビクターなら分解/切断とスタンだけを目的と考え、メルなら「追放されしメイジ」の自動効果を発動させたら売るといった感じでした。理想的とは言えません。その後、微調整を行いましたが(パッチ13.6では私たちが最終的な調整だと考えるものがリリースされます)、想定以上に時間がかかりました。

これらのチャンピオンからは多くのことを学びました。リリース前は、ボード全体のスタンはゲームバランスを崩壊させるのではないかと心配していましたが、ビクターがリリースされると、彼の他の側面に比べてもまったく脅威ではなかったことが分かりました。実際、分解/切断を削除してからは、ビクターを何度か強化する必要がありました。その一方でワーウィックからは、ステータスが強化された近接キャリーに関して手痛い教訓を学ぶこととなりましたが、それについては別のセクションでお話しします。
アノマリーとチャンピオンの進化
直近数セットの間(「オーグメント後の時代」と呼びましょう)に、私たちのセットメカニクスの目標は変化しています。TFTは今のままでも十分に複雑なゲームなので、「ギズモ&ガジェット」以降はメカニクスの比率を縮小して、テーマとの繋がりを強化してきました。このパラダイムにおいては、セットメカニクスとしてのアノマリーは成功したと言え、特に最初の数パッチで配分ルールに微調整を行いつつ、興味深い選択肢をいくつか追加してからは、かなり良くなりました。
リリース当時は、欲しいアノマリーを選び抜くことができ、特定のアノマリーでしか存在できないチーム構成を使うプロも存在しましたが(アーゴットにセトを食べさせるのが刺激的だったことは否定できません)、プレイヤーが特定のアノマリーと強いと考えられているチーム構成だけに固執してしまい、デメリットが大きく、ゲームのバラエティーが低下しました。特定のアノマリーを選択できることを気に入っているプレイヤーが存在したことは注目に値しますが(バラエティーが少ない方を好むプレイヤーは常に一定数存在するでしょう)、ほとんどのプレイヤーは基本的にそれとは反対の志向でバラエティーが多い方を好みます
これまでにTFTをもっと面白くできる方法を見つけた時と同じように、私たちは素早くアクションを取りました。アノマリーの最初の変更では抽選を12回行うまでは同じアノマリーが登場しないようにしつつ、それ以降の抽選結果は完全にランダムにしましたが、この変更では新たな問題に直面しました。結果が完全にランダムの場合、一度抽選された選択肢も含めて、常時どの選択肢も等しい確率で出現することになります。統計の難しさがここにあるのですが、各アノマリーは66面体のサイコロ上の数字と同じように捉えることができ、3の出目「連続キル」が抽選された後、再び同じアノマリーが出る確率は他のアノマリーと同じです。この計算自体は正しいものの、完全にランダムにはならないように“見えない”ルールを追加する必要がありました。このルールが後のパッチで導入されたことで、リロールを12回する間は同じアノマリーが登場しないようになりました。
確率と数学はゲームデザインの基礎をなすものですが、アノマリーから得たもう1つの重要な学びは、プレイヤーに喜んでもらえるアノマリーとはどれなのか──つまり、最も面白いアノマリーはどれなのかという点でした。バランスが調整された状態でも、人気が高いアノマリーは、ニッチに適用されるものではなく、広範で汎用的に役立つパワーを提供するものでした。「感染型アノマリー」や「フィニッシャー」、「超特大サイズ」などのアノマリーがこれにあたりますが、
これらは汎用性の高さはもちろん、そのシンプルさが人気の理由でした。得られる効果を単純化して混乱を避け、幅広いチーム構成に適用可能にすることの重要性を改めて思い出させてくれた一方で、私たちも、そして皆さんも、情報が広まる仕組みがそれとは対照的であることを学びました。
次に移る前に、アノマリーについてもう1つだけお話ししておきます。敵を「深い根」で引き寄せたり、「レーザーアイ」で対象に無限にレーザーを照射したりと、アノマリーはキャリーにアイテムを3つ持たせるだけではない新鮮なアプローチで、チャンピオンのパワーの可能性を広げてくれました。上掲の「宇宙の中心」トゥイッチの例も、チャンピオンのパワーファンタジーをさらに現実離れしたものへと変貌させました。このような変化は魅力的であり、いずれまた再導入したいと思っていますが… それは次のセットではありません。
オーグメントのデザイン
今回のオーグメントのラインナップからは、些細ながらもいくつか学んだことがありました。どれもニッチなので、簡潔に説明していきます。
「想定内の意外性」か「混沌への呼び声」か:「混沌への呼び声」のエキサイティングかつランダムなパワーが3つの小規模なイベントに希釈された後、どれも良いとは感じられず、オーグメントの満足感が低下したように感じられました。このオーグメントが気に入っていない訳ではありませんが、今回の例でランダムなメリットは、小出しにするよりも一度で一気に出した方がいいという考えを改めて思い知らされました。
シルバーチャンピオンオーグメント:「マジック・アンド・メイヘム」の期間中は、ゴールドオーグメントのパワーレベルでコスト1のチャンピオンオーグメントをバランス調整することに苦戦しました。これらは試合終盤に向けてスケーリングできるくらい強いか(コスト1チャンピオンに私たちが求めるものとは言い切れませんが)、あるいはまったく活躍できずに終わるかのどちらかでした。チャンピオンオーグメントをシルバーティアに配置することでバランスが取りやすく、かつ適切なパワーレベルが取れることが多くなりました。また、「トロール中」、「狂気の化学者」、「刃の舞」のどれもがエキサイティングで独特なチーム構成を可能にし、とても楽しい体験が生まれました。

「ゴーレム化」と「ダミー化」:この2つはハイリスク・ハイリターンなオーグメントの新たな取り組みであり、今後も継続していく価値があるものとして言及に値します。ハイリスク・ハイリターンなオーグメントは「マジック・アンド・メイヘム」で重要な位置を占めていましたが、その多くはさらなる試行の必要を感じさせるものでした。今後もこれらのオーグメントの検討を続けていきますが、エコノミー特性が好きな人向けの特性も必ず用意しますのでご安心ください…
チームアップオーグメント:これらのおかげで、特性構成が理由で上手く共存できなかった『Arcane』の物語上の人間関係もボード上で実現できました。「Arcaneの世界へ」はそれを実現するためにあった節があるので、喜ばしいことでした。しかし、チームアップオーグメントがもたらすファンタジーは素晴らしかったものの、パワーとゲームプレイ上の興奮は薄まりました。パワーの源となるユニットに早期にアクセスする必要があり、オーグメントの効果が貢献する余地が多くなかったのです。「意外なコンビ」(セヴィカとジンクス)や「戒厳令」(ケイトリンとアンベッサ)などのオーグメントは、コスト5ユニットに安定してアクセスできるようになる前に強力なユニットを提供してくれることが多かったものの、戦闘力のほとんどは、チャンピオンを早期に入手することによるエコノミー面のパワーでした。
コスト6チャンピオンのオーグメント:これらはすべて調整が足りない状態となってしまいました。コスト6ユニットをアノマリーに入れた際に生まれる脅威的なユニットを上限として想定した上での調整が必要だったためです。ワーウィックと「パワー吸収」を組み合わせて剛力のワーウィックを作ったり、他の強力なキャリーアノマリーを使ったことがあるなら、その破壊力は理解できるでしょう。しかし、ほとんどのプレイヤーにとっては、多くの場合で十分に期待に応えるオーグメントではありませんでした。
開幕時遭遇
開幕時遭遇に関しては、引き続き社内で積極的に話し合いを行っています。明確なトレードオフがあるものであり、コミュニティー内でも頻繁に議論が行われているからです。
投票で選ぶポータルの代わりに開幕時遭遇を採用することは、複雑さによる障壁を下げたいという私たちの目標に一致しているので(それに、投票時に時々発生する社会的とはいえない状況も回避できるので)、今後も開幕時遭遇の採用を続けていくつもりです。しかし、このセットでは開幕時遭遇について多くを学びました。初期段階では、プレイヤーはもっと王道なTFT体験を求めていると考えていたので、開幕時遭遇の頻度を大幅に低下させていましたが、その考えはすぐに変わりました。初期のプレイテストでは開幕時遭遇なしが40%だったところ、PBEでは20%になり、ライブサーバーでは10%になりました。また、ほとんどの場合でTFTのゲームプレイの核となる部分を劇的に変化させる開幕時遭遇はおそらく存在すべきでないことも学びました。ここで指しているのは「ワーウィックの飢え」で、ロビーのテンポが大幅に変わり過ぎていました。アンベッサの「流浪のトレーナー」の遭遇もそのような側面がありましたが、プレイヤーから(そして私たちからも)圧倒的に好まれていたので、これは例外として捉えながら、皆さんのご要望に沿えなかった場合は再び改善を行おうと思います。
ケミ長者
「ケミ長者」はキャッシュアウト後にユニットが直接的に強化されるという新しい形の高リスク特性で、とても興味深い試みとなりました。また、エキサイティングな「ケミ長者」のキャリーが多かったことも功を奏しました。
しかし、「Arcaneの世界へ」で「ケミ長者」を悩ませたのは、しきい値に関するバランスの問題でした。リリース初期の「ケミ長者」は非常に弱く、キャッシュアウトしたアイテムが十分なパワーを与えていなかったほか、強力な戦利品にアクセスするレシピの難易度が高すぎました(試合序盤での紋章とコスト3)。セットの半ばにコンペティティブプレイヤー向けに過度な修正を行うこととなり、パッチ13.5で構造的な変更を行った際にようやくパワー上限を排除し、同時に(要件が紋章とコスト3ではなく、いずれかのコスト3を試合序盤で入手となり)もっと安定して利用できるようにしました。この変更の方向性は間違っておらず、「ケミ長者」プレイヤーの強さに新たな制御方法を設けることで、ほとんどのコンペティティブプレイヤーにとって特性のバランスが改善されましたが、結果的にリワーク後は想定したよりも弱くなってしまいました。

最後に、キャッシュアウト報酬についてです。強力かつ違法な「ケミ長者」アイテムを1つ入手できるのは新鮮でしたが、複数のランダムでクールな報酬をくれる「フォーチュン」などに比べると派手さに欠けました。次のセットでは、このようなハイリスク・ハイリターンな特性は一旦休止としますが、面白いキャッシュアウト特性の開発は今後も続けてながら、上手くいくものは何かや、どこを進化させるべきかを考えていきます。「シュガークラフト」、高リスクオーグメント、「ケミ長者」──これらはどれも一部の(またはごく少数の)プレイヤーに好評だった要素からの発展させていったものですが、次のセットでは別のスタイルのキャッシュアウト特性を試してみます。次のセットの特性は、大胆な発想の転換によって見せ場が生み出されるように開発を進めています。
複数の選択肢がある特性を作り出す

企画段階の「フォームスワッパー」は面白そうな特性でしたが、各チャンピオンに2つのバージョンを制作する必要があることから、追加の作業を大量に必要とするものでした──果たして、成功したのでしょうか?ある程度はそうだと言えます。チーム構成を明確に決定づける瞬間にチャンピオンが各形態で活用されたのは成功を収めた点ですが(例:エリスが「ブルーザー」構成で後衛キャリーになる)、両方の形態のバランスが上手く取れている状態でも、プレイヤーの認識が「フォームスワッパー」のいずれかの形態に囚われていて、常に正解だとは限らない配置をされることもありました(例:何があっても、エリスを前衛に配置)。これには社会的な要素が影響しているのかもしれませんが、一方の形態の勝率が51%でもう一方が49%だった場合でも、前者の形態の方が常に強いという認識を持たれてしまいます。
現時点では、「インクボーン フェーブル」の「ストーリーウィーバー」や「リミックス ランブル」のソナなどを振り返ってみても、「フォームスワッパー」は複数の選択肢を持った特性のなかでは最も成功した特性です。スウェインとジェイスは両方の形態が頻繁にみられましたが、その一方でエリスとガングプランクはいずれかの形態しか見られないことが多くなっていました。今後も、このような特性では勝率切り上げ志向の問題に常に対処していく必要があると思いますが、これからも模索を続けるだけの価値があるチャレンジだと考えています!
近接チャンピオンのパワーのスケーリング

少し数学っぽい話になりますが、内容は単純です。近接チャンピオンは多くの場合で、ダメージを受けても、そのダメージからマナを獲得し、スキルを使用することで生存します。スターレベルを上げた際に近接キャリーが獲得する体力の大きさが理由で、体力と攻撃力の上昇から恩恵を得る近接チャンピオンの★★と★★★の差が大きくなっていました。これは、近接キャリーの成功の鍵を握るのが生存能力となっているため特に問題でした。勝つためには体力と攻撃力が必要ですが、それらを獲得していくと、キャリーとタンクの両方の役割をこなすようになってしまいます。このセットでそのようなスターレベルのしきい値を持っていた典型的な例は、スミーチ、ヴァイオレットの★★★(と★★★★)、アーゴットの★★★、そしてコスト6として★★のコスト4ユニット相当のステータスを持つワーウィックもです。長期的には、この問題に対してシステムレベルの解決策を得られる予定ですが、それには少し時間がかかります。
タンクと耐久力
タンクには自己回復、行動妨害、自己シールド、耐久力増加(物理防御/魔法防御)の4種類のスキルがあります。これらのうち、耐久力増加は常に最も弱いスキルとなっています。なぜなら、スキルを使用できる頃には多くの体力を失っており、耐久力増加の恩恵が少なくなるからです。レオナが体力100でスキルを使用した場合、その100の体力は実質150の体力にしかなりませんが、一方でブリッツクランクなどのタンクが体力100で450のシールドを獲得したら、体力550です。

レオナ/ヌヌが最も顕著な例ですが、このルールに1人だけ例外が存在します。シンジドは親友のレナータ・グラスクが投げ与える増加体力のおかげで、ダメージ軽減効果で勝つことができていました(シールドは皆のものだったとシンジドには言わないでおきましょう)。今後のタンククラスに関しては、物理防御/魔法防御またはダメージ軽減効果を獲得するタンクには特に注意を払い、これらを早期に発動できる方法を用意するか、彼らが戦闘を通して活躍できるような別の仕組みを用意する必要があります。
「獣たちの宴」のリバイバル
皆さん、こんにちは!リバイバル(およびその他諸々)でプロダクトマネージャーを担当するRiot Xtnaです。「Arcaneの世界へ」の期間中に新たなリバイバルをリリースしましたが、ファンに人気のセットを現代のTFTに復活させることができたことは大きな成果でした。リバイバルとしては第3弾となった「獣たちの宴」ですが、その成果は私たちの想定を超えました。TFTの全世界合計プレイ時間で見ると、このリバイバルは最大で半分近くに達していましたが、単にプレイ時間が長かったからと言って改善点がない訳ではありません(ティーモとか…)。
「獣たちの宴」の現代化には、オリジナルのチャンピオンデザインの中核を維持しながら、ゲーム体験を抑圧的にせずに、楽しいものにするという難しさがありました。オリジナルのセットがリリースされた当時のように、スキル/特性にカウンターするために「ゼファー」や「トラップ クロウ」などのアイテムを作成することはもうできません(ベテランのTFTプレイヤーならご存じでしょう)。「リバイバル: 獣たちの宴」では戦闘ペースに少々苦戦したことは認めざるを得ませんが、最初のリリース後に大型パッチをリリースして、ある程度の軌道修正を行いました。過去セットの楽しいユニットをプレイする面白さと、現在のTFTファンが気に入ってくれている今の仕組みとの間で最適なバランスを取るために、今後も努力を続けていきます。
各プレイヤー専用のバッグやチャンピオンプールも、今回私たちが変更を試みたもう1つの部分であり、「楽しい時間を過ごすために、好きなものをプレイする」というリバイバルの側面を踏まえてのものでした。次のリバイバルでもこれらを維持するかどうかは分かりませんが、本モードのフィードバックの集計作業が終わり次第、決断はまもなく行われるでしょう。皆さんがリバイバルを気に入ったとしても、気に入らなかったとしても、特に興味がなかったとしても(それも立派な回答です)、ぜひご意見をお聞かせください。

リバイバルに関して最後に触れておきたいのは、リバイバルラダーです。これはどちらかと言えばやり込みに焦点を当てたコンペティティブシステムであり、リラックスして楽しむリバイバルの性質を受け入れつつ、ランキングの上位を目指したい人に報酬を提供するものです。「獣たちの宴」リバイバルでは、「予見者」の皆さんを称える新たなランキングシステムを追加しましたが、これによってランクティア単体ではできない方法で上位の中でも屈指のプレイヤーの皆さんにスポットライトを当てることができるので、次回も維持する予定です。
長くなりましたね!TFTの開発と同じように、この記事も決してひとりでは書くことができませんでした。「Arcaneの世界へ」と「獣たちの宴」リバイバルの開発に手を貸してくれたチーム全員に感謝するとともに、本作をプレイし、フィードバックを提供し、今この瞬間ブログを読んでくれている、プレイヤーの皆さんにも感謝します。今後の(未来からやってくる?)次のセットについても、また話したいことが山ほど出てくるでしょう。これらの教訓がどのように活かされたのか、今後のセットでぜひ確かめてみてください!