/Dev TFT:コブコを創る
初めて尽くしのセットとなった「インクボーン フェーブル」。その中でも特にボリュームたっぷりだったのがキャラクターの分野でした。今回はアフェリオスの双子の妹であるアルーンを独立ユニットとして登場させ、「ワイルドリフト」から神話創生ゾーイを招待し、さらに完全新規キャラクターまでルーンテラに登場させていますから。そこで今回はゲームデザイナーのMichael Sloan、コンセプトアーティストのKK Zhang、アニメーターのSteve Ohに集まってもらい、「TFT史上初めての、ルーンテラユニバースのオリジナルキャラクター」であるコブコの誕生秘話を語ってもらうことにしました!
待望の新人
こんがりブラウンの陽気なヨードルを生み出すきっかけとなったのは、フォーチュン特性の復活でした。爆発花火トリスターナとティーモには前線を任せられる友だちが必要だったのです。
TFTにヨードル/準ヨードル特性(例:「リミックス ランブル」のエモ)を登場させる場合、開発チームは前衛ユニットとして同じタンクチャンピオンたち(ポッピーとアムム)を繰り返し起用してきました。また想像力を大いに振るい、元々タンクのイメージが薄いチャンピオンたち(ケネン、ヴェックス)にタンクを任せなければならない事も多々ありました。TFTにおいて「充分な前衛を揃える」ことはかなり重要であり、それは典型的な私の一般的なLoLソロキューチームとは違うからです。しかしセットを重ね、こうしたタンク役チャンピオンたちもさすがにお馴染みすぎる顔ぶれになってきました。タンク役ヨードルを新たに創るという考えに至ったのはこういう経緯があったのです。おまけにコブコにはタンク役以外にも重要な仕事がありました。栄えある「フォーチュン」特性のユニットとして活躍する必要もあったのです。
「宿命」セットのファン一番人気特性だったフォーチュンの復活は、(特性自体と同様に)かなり高いリスクを伴う決断でした。「宿命」セットのフォーチュンには思い出深いユニットが何体もいます。たとえば初登場だったタム・ケンチと聞いて、サンファイア ケープ&ソーンメイル装備のリロールブルーザーのような初期の実験的ビルドを思い出す人もいるでしょう。今回フォーチュンを復活させる上では、上がり続けるTFTチャンピオンの品質水準をクリアするだけでなく、フォーチュン特性が初めてリリースされた時にタム・ケンチやアニーのようなユニットが持っていた「楽しさ」を維持することも強く意識する必要がありました。
これはまさにコブコが満たすべきニーズでしたが、同じく重視していたのがタイトルの枠を超えたルーンテラIP表現というニーズでした。今回のセットでいえば「ワイルドリフト」の神話創生ゾーイがこれに当たります。フォーチュンが素敵な特性であるからこそ、ライアットゲームズが別のタイトルで生み出した「素敵さ」と組み合わせるべきだろうと私たちは考えたのです。過去に「レジェンド・オブ・ルーンテラ」のT-Hex、「ルーンテラ リフォージ」のバロンなどでしてきたように。
今セットのTFTで登場しているゾーイのスキン「神話創生」は、「ワイルドリフト」でも高い人気を誇るスキンです。フォーチュン特性の色調とも完璧にマッチしていましたが、神話創生はスキンテーマとビジュアルの両面でゾーイのもう一方の特性であるストーリーウィーバーとも親和性が抜群でした。この点は本当にラッキーだったと思います。同スキンの登場はきっと「ワイルドリフト」プレイヤーにとっても嬉しい瞬間だったのではないでしょうか。「ワイルドリフト」のゲームディレクターDavid Xuも「ルーンテラを舞台とする他の全ゲームと共に学び、共有し、讃えることができる。これこそ、LoLファミリーの一員であることの喜びです」とコメントしています。今回の「インクボーン フェーブル」でゾーイの神話創生スキンを登場させられて、私たちも大変感激しています。ゲームタイトル横断コラボレーションは「ワイルドリフト」のDNAにしっかりと刻まれていますが、その反響は回を重ねるごとに大きく温かくなっており、私たちも継続への自信を深めています。…あるいは将来のセットでこうしたコラボレーションが増えることもあるかもしれませんね。
ちょっと待ってDavid落ち着いて、ネタバレはなしで!!
さて、気を取り直してコブコの話題に戻りましょう。続いてはSloan、KK、Steveの3人に当時を振り返ってもらいましょう。
コブコのコンセプト制作
SLOAN:
今回は初めての試みだったので、最大のハードルは…初の試みであることそれ自体でした。そこでコブコの開発では、ナラティブとアートを同時進行させるのではなく、まず人柄とストーリーに注力しました。そのおかげで彼のイメージはどんどん強固になっていったのですが、その一方でビジュアルはかなり長い間決まらずにいました。
コブコは格闘家で、ヨードルの魔法を操ります。でも、それはいちばん大事なポイントからはずいぶん遠い要素です。コブコの一番大事なポイント、それは人柄と独特の人生観です。実はコブコの場合は先に人柄がしっかり固まっていたので、コンセプトアートを描くずっと前にセリフを書いていました。彼の人生観はこのセリフたちから垣間見えるので、以下に私のお気に入りをいくつか紹介しましょう。
“人生は時にバンドルベリーのように酸っぱい。そんな時は…バンドルビールを作ればいい!”
“悲しむことはない。人はつまづきながら歩き方を学ぶものだ!”
あなたが何かで挫折しても、コブコは優しく励まし、再び挑むように促してくれる。コブコに負けた?大丈夫。彼はきっと「君ならば次は勝つだろう!」と誰よりも強く信じてくれます。
やがて私たちは声優さんとのやり取りの中で、コブコが「レジェンド・オブ・ルーンテラ」のアイオニアのテーマを口ずさんでいたらどうだろうと考えました。コブコは歌唱力こそありませんが、歌うのは大好きなんです。この時は声優さんに「先に原曲を聞きますか?」と聞いたのですが、彼は初めて聞く状態で収録に臨み、テンポだけは死守しつつぶっつけ本番で歌ってみようと提案してくれたんです。こうして収録した音声は少し外れた感じで、コブコにぴったりの仕上がりとなりました。
こうして音声と人柄が確定した後は一切合切をコンセプトアーティストのKKに渡し、「思いきりワイルドに料理しちゃって」とお願いしました。とはいえこの時はどんな姿にしたいのかも定まっていませんでした。それが定まったのは、実際に上がってきた案のひとつを見たときのことです。
KK:
コブコは私にとって初めてのチャンピオンコンセプト制作だったのでとにかく大興奮でした。当初はアイデアが溢れすぎて爆発していましたね。考えうる可能性をリスト化し、ひとつひとつをスケッチに起こし、それから「コブコはどんな姿を取りうるか」を模索し続けました。
LoLのチャンピオンチームとアートディレクターにはたくさん助けてもらいました。チャンピオンをチャンピオンたらしめる見た目とは何か?について、経験と教訓を惜しみなく共有してくれたんです。
コブコが他のヨードルたちと同様に背の低いチャンピオンになることは分かっていましたが、タンクなので体格をがっしりさせたいという希望もありました。本当は巨体にしたかったんですが、ヨードルですから…。最終的には身長は約120cmだけど分厚くてムキムキの体格になりました。タフで強いイメージを補強するためにアーマーを着せる案も考えたんですが、彼の強さは彼自身から湧き出ているものなので、アーマーは合わないと判断してやめています。
正直、描いている間はずっとニコニコしていたと思います。コブコは癒やしの力を持つ者たちの師匠みたいな存在なんです。うちのネコのもふもふなおなかに顔を埋め、ネコが私を癒やしてくれるところを想像して…コブコもそんな存在になったらと想像してました。
最終的に、手のひらは大きくパワフルなデザインにしました。手のひらには助ける力、温かい力という雰囲気が強いですよね。攻撃的な拳とは対照的です。ハグや拍手など、励ます行為を想起させますから。それって実にコブコらしいですよね。この方向性にして良かったと思っています。
SLOAN:
この姿に到達するまでには、大量のコンセプト案とやりとりを要したんです。実は最終バージョンも、締め切り直前に変更をお願いして作ってもらったデザインでした。チームで決めた最終コンセプトがどうしてもしっくり来なくて、アートにあと一回だけ変えさせて欲しいとお願いしたんです。そしてKKが最後にこのスケッチを送ってくれた。巨大でクールな肉球とずんぐりした腕を持つヨードル。一目惚れでした
KK:
それまで模索していたのは、コブコにユニークな巨躯の印象を付ける方向性だったんです。でも一方で、チャンピオンとしての力の源は筋肉ではなく人柄にしたいとも考えていた。そこで、トレーニング用の重りを腕に付ける案を思いつきました。シルエットの差別化要因にもなるだろうと。
これも見た目はキュートだったんですが…LoLのチャンピオンチームからフィードバックをもらったんです。直感的に理解できる案ではないし、重りは手錠やガントレットに見間違えられるかもしれないと。プレイヤーに明瞭かつ楽しいゲーム体験を届けることは最優先事項ですから、混乱させてしまっては意味がないと考え、この案はボツにしました。では、今のコブコの形状を維持しながら「力の源」を明確にするにはどうしたらいいのでしょう?そして陽気な人柄はどうやって維持すれば?私は考え続けました。ここで閃いたのが、巨大な手のひらのデザイン案だったんです。これは個人的にすごくしっくり来ました。
SLOAN:
KKが描いてくれたコンセプトアートの一枚一枚が最終バージョンに近づく歩みだったように感じてます。1枚描き上がるごとに完成に近づいていく感じがしてましたね。そして最終的には、思いっきり突き抜けた案を生み出してくれました。
ルーンテラにおけるコブコの立ち位置
SLOAN:
コブコのナラティブ設定には、「ヨードルである」という大きなアドバンテージがありました。ヨードルはエキセントリックで、それぞれ好き勝手に生きています。だから他のキャラクターのようにルーンテラの物語に大きな影響を及ぼすことはほとんどありません。コブコは凄まじい地位や権力があるわけでもないし、世界を救おうとも終わらせようともしていません。コブコの究極的な目標は、誰かと笑顔を分かち合うこと、楽しいことを新発見すること、そして他者が人生の愛しかたを学ぶ手伝いをすることなんです。もしサイラスがコブコのULTを盗んだら、きっと楽しそうな笑顔を浮かべるでしょう。…もしかしたら、サイラスには必要な事かもしれません。
コブコがルーンテラの住人であることは正史ですが、コンバージェンスにおける彼の存在はセットと同様に「儚い」存在でもあります。TFTではチャンピオンたちを可能な限りありのままの姿で登場させるようにしていますが、究極的には、TFTのセットに登場する彼らは「ルーンテラとは違う世界」にいるのです。
編注: @necrit 上の段落は動画でも読み上げてください
ゲーム内でのコブコ
SLOAN:
コブコのスキル自動効果「利子で獲得したゴールドに応じて体力が増加する」は、実は発案された当時の内容からほぼ変更されていません。一方、スキル自体は今と同じ踊りでしたが、当初の発動効果は「自身の最大体力の割合回復」でした。
しかしいざ試してみると、当初のスキルではコブコだけが生き残る状況が生じました。誰も倒せないが、誰にも倒されないユニットになっていたのです。そこで私たちは、まず回復効果を最大体力割合から固定値に変更しました。そしてKKから上がってきた「大きなおてて」デザインを受け、これならば踊りが肉球を強化し、次の通常攻撃で追加ダメージを与えても自然だろうと考えました。戦闘に勝つための能力を与えられますし、「コブコは他者を傷つける強さを持つけれど、本人はできれば傷つけたくない」という点も表現できると考えたのです。
とはいえコブコも、将来的には別の戦い方を見せてくれるかもしれませんね。なにせヨードルの魔法、ポジティブな人柄、そして圧倒的筋肉を兼ね備えているわけですから!
STEVE:
コブコのコンセプトとナラティブを見た時の第一印象は、「凶悪なタンク系ファイターというよりは、朗らかな印象の守護者って感じだな」でした。
確かに彼はこれまでのヨードルたちと比べても非常にユニークなキャラクターです。まず、タンクらしいビジュアルを持つヨードルは彼が初めてです。これは彼の移動モーションを作る上で大変大きな要因となりました。
彼のアートとナラティブを補強するため、コブコのアニメーションは絶対に嬉しさと幸福感にあふれたものにしようと考えました。コブコの所作から滲むのは攻撃性や暴力ではなく、守護や癒やしですから。友だちとの組手は好きですが、それも「この瞬間を共に楽しむ行為」であって「命がけの戦い」ではありません。
コブコの顔/行動アニメーションを制作する時には、こうした考えをピラー(柱)に据えて取り組みました。顔の表情アニメーションには温かな笑顔や元気な大笑いなどを取り揃え、行動アニメーションでは「重量感はあるが軽やかな足さばき」を意識したところ、これがコブコにハマりました。人柄と所作をうまく融合させたアニメーションができたのではないかと思います。実際のアニメーションは以下をどうぞ。
今後について
ノムジー、ソーム、シルコ…TFTに新たなキャラクターを登場させることは、開発チームにとってある種のサイドクエストのような存在であり続けてきました。他のゲームタイトルからTFTに登場する「素敵な何か」は──今セットにおける「ワイルドリフト」の神話創生ゾーイのように——セットをより特別なものにしてくれます。
私たちは今後も、他のライアットゲームズタイトルとのコラボレーション機会を模索し続け、チャンピオンラインナップとセットテーマ表現の深化を進めていくつもりです。たとえばリリアがK/DAのスーパーファンになったり、アルーンが配置可能なユニットになったりしてきたように。この試みは今後のセットでもどんどんレベルアップさせていくつもりなのでどうぞお楽しみに。そして今後のTFTに登場して欲しいルーンテラのキャラクターやアイデアがある方は、ぜひ教えてくださいね!